研究概要 |
(1)Si(100)表面において観測される表面欠陥として,A型,B型,C型が報告されてきたが,特にc型欠陥の起源については未だ解決されていなかった.Hossain博士は,低温(80K)における高分解能走査型トンネル顕微鏡(STM)を駆使して,c型欠陥を詳細に観察し,それらの形状が4種に分類され,さらに2組の鏡像異性体からなることを発見した.水分子の解離吸着のSTM像と照らし合わせることにより,c型欠陥の起源は2つの隣り合ったシリコン表面ダイマーに1個の水分子が解離吸着したものと結論した. (2)Si(100)表面のシリコンは非対称ダイマー構造をとるため,それぞれの原子は異なる電子状態をとり,化学反応性も異なることが期待される.Hossain博士は低温STMを駆使して,Si(100)c(4x2)表面におけるトリメチルアミン(TMA),アンモニアなどの分子を吸着させ,吸着状態を原子分解能で調べた.その結果,TMAは100%選択的に非対称ダイマーの下部Si原子に分子状吸着すること,アンモニア分子は動的前駆状態を経由して解離吸着し1次元島状にドメインが成長することなどを見いだした. (3)Si(100)表面にアルケンやアルキンは環化付加反応することが知られている.アルキンとアミン両方の官能基を持つ分子(ジメチルアミノ2プロピン)を低温で吸着させると非対称ダイマーの下部Si原子に分子状吸着するが,室温ではアセチレン基が環化付加反応することを,STMや表面振動分光法を用いて見いだした.温度により吸着最表面の官能基をコントロールできることを示した.
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