研究概要 |
真核細胞では,細胞質と核が核膜により隔てられている。核と細胞質の間で行われる物質輸送は、核膜に存在する核膜孔複合体(Nuclear pore complex;NPC)を通して行われる。NPCは50-100種類もの蛋白質からなり,イオンや低分子量の蛋白質(分子量20-40kDa以下)を自由拡散で通過させる。しかし,これよりも大きな分子はNPCを自由に通過できない。そこで分子量の大きなものは、その分子内にシグナル配列をもち、NPCの通過が許可される仕組みがある。シグナル配列には、細胞質から核へ移行するために必要な"核移行シグナル"と核から細胞質へと移行するために必要な"核外移行シグナル"がある。"核移行シグナル"(Nuclear Localization Signal;NLS)を持つ蛋白質は、NLSがアダプタ分子importin-αにより認識され、その後さらに核輸送担体のimportin-βがimportin-αと結合し,三者の複合体としてNPCへターゲットするものと、NLSがimportin-βに直接に認識され二者の複合体でNPCを通過するものなど二通りがある。今回importin-βとSREBP-2(Sterol regulatory element binding Protein-2)の結晶構造解析に成功した。この構造は転写因子でCholesterol生合成に関係ある蛋白質であるSREBP-2がimportin-βに2量体として結合され複合体を作るため、今まで知られているimportin-βの3次元構造とはかなり異なった構造を取っている。また、その結合様式に関しても今までimportin-βとの複合体を形成する蛋白質の共通点である塩基性残基たけでなく、疎水性の残基も複合体の形成に深く関わってるということも分かった。今回の構造解析によりSREBP-2が核に移行するためのNLSを確定することができた。この結晶構造解析の成果はすでに論文に報告している。
|