研究概要 |
特に力を入れてこの1年研究したものは,レニー情報エントロピーの物理的な基礎付けとそれに関連する重要な問題である[1-3]。最近盛んに議論されているレニー統計に関わる問題に,種々の定量的な観点を提供した. 論文[1]では,観測可能性の問題とそれと密接に関わっているレニー・エントロピー(RE)の安定性の議論を行った。REを観測不可能としてしまう条件(レッシェの観測可能条件)はあまりに狭すぎ,実際,多くの標準的な物理量(例えば,感受率,相関長,自由エネルギー)がレッシェ条件を満たさないことになってしまうことを示した。その上で,「これらの臨界点を持つ物理量は,状態空間中の臨界点ではそめ寄与の測度がゼロである」とする,より直感的な観測可能概念を提供した。REの場合,状態空間はすべての可能な統計で構成された空間であり,その測度はバータチャリヤ測度である。臨界点(つまり,分布そのもの)が(超)希少事象に対応し,実際その測度がゼロであることを証明した。「ハゲドロン相転移が自然界に存在するか」,また「ハゲドロン臨界温度が現実的(観測可能)な量か」という現在盛んに議論されている問題にとって,REの観測可能性はたいへん本賛的で重要なものである。 論文[2,3]では,繰込みの問題を扱った。そこでは,独立な情報の加法性と平均の準線形性を満たすミニマル繰込みの処方を堤供した。得られたREは,発散に関わるカルバック・リブラー測度(ネゲントロピーとも呼ばれる)そのものであることを直接示すことができた。エントロピー指数αの物理的な意味を知るために,マルティフラクタル構造を持つ系を調べた。このような系はたいへん重要で,しかも非常に多数の例が存在する。乱流,パーコレーション,集団拡散系,DNA列,財政,ストリング理論などがその例である。ヴィルダー・スティルテュス再構成理論を利用して,(マルティ)フラクタル系の「完全」な情報を得るためには,すべてのオーダーのREを知る必夢があることを示した。さらに,離散的事象や単純な測度空間(例えば,D^d)に対しては,シャノン・エントロピーの寄与が他のREの寄与を凌駕していることを証明した。マルティフラクタル上でシャノン・エントロピーを最大化することは,マルティフラクタル構造を陽に引き合いに出さずにREを直接最大化するとこと同等であることを,最大エントロピー(MaxEnt)の観点から示すことにも成功した。
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