研究概要 |
本研究の目的は,硫黄原子で架橋したフェノールの環状4量体「チアカリックス[4]アレーン(TCA)」の機能開発の一環として,TCA単位を複数個有する新規レセプターの設計,合成,およびその機能開発を行うことである。研究実施計画に従い,本年度はTCAの1,2-および1,3-ビス(O-アミノエチル)誘導体から.ビスカリックスアレーン型大環状ホスト分子の合成を検討し,その金属イオン認識能を評価した。 1.TCAの1.2-および1,3-ビス(O-シアノメチル)誘導体は,syn-体とanti-体の平衡にある。この平衡混合物をLiAlH_4で還元すると,興味深いことにそれぞれanti-1,2-および1,3-ビス(O-アミノエチル)誘導体が収率は低いが単一の立体異性体として得られた。また,syn-1,2-ビス(O-アミノエチル)誘導体は,昨年度に合成したTCAのpartial-cone配座の1,2-(O,O'-テトライソプロピルジシロキサン-1,3-ジイル)-3,4-ビス(O-シアノメチル)誘導体を還元し,続いてジシロキサン架橋基を除去することにより,syn-1,3-ビス(O-アミノエチル)誘導体は,syn-1,3-ビス(O-フタルイミドエチル)誘導体を別途合成し,これをヒドラジン分解することにより得ることができた。これらにより,TCAのビス(O-アミノエチル)誘導体の全立体異性体を位置および立体選択的に合成する方法を確立した。 2.2分子のsyn-1,3-ビス(O-アミノエチル)誘導体を4種類のα,ω-ジアルデヒドをリンカーとして結合して大環状ホスト分子を合成した。また,得られたホスト分子の金属イオン認識能を溶媒抽出により調べたところ,Ag^+イオンを選択的に抽出することを見出した。
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