研究概要 |
ロボットマニュピレーションの最も実用的な応用のひとつは,障害者のリハビリテーションのための補助具である.我々は,指の補助具に関して,簡単で実用的な手法を提案した.特に,親指の損失に関するリハビリテーション用のメカニズムを構築した.この補助具は,残った指と失った指を代行するメカニカルな指の巧みな連動動作を実現する.これにより,最も日常的な作業を行う能力,たとえば文字を書く動作を実行することができる.この補助具は一部の指を失った手にグローブとして着用することができる.また安価でシンプルであり,障害者が簡単に装着することができる. 本年度はコンセプト,デザイン,モデリング,シミュレーション,義指のメカニズムの開発を,体系的に統合した.ボンドグラフの技術は義指のモデルやメカニズムのダイナミクスのシミュレーションに使われてきた.特に,関節における動作や柔軟指による物体把持,相互接触に有効である.腱駆動やそのダンピング,また関節における摩擦をモデル化しシミュレーションを行った.我々はベクトルボンドグラフを使って人の骨格ダイナミクスをモデル化した.提案手法は手の補助具のメカニズムだけでなく,人の体の他の部分にも応用できる.補助具システムにおいて,駆動関節から受動関節への動作の伝達は,関節軸の位置関係が固定されていないため,モデリングが困難であった.ベクトルボンドグラフを使うことにより,このメカニズムを表すことに成功した.さらに,ボンドグラフオブジェクトモジュールのコンセプトを発展させ,補助具システムのモデリングを容易にした.これにより,数値シミュレーションを実現すること,システムを深く理解することが,容易になる.
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