研究概要 |
本年度は最終年度で、Ren氏は11月までの滞在であった。したがって、実質的に約半年の研究期間である。そのため、いままでの成果の国際学会(カナダ)での発表と、いままでの成果の最終確認のための追実験に集中した。実験系は昨年度までと同様で、イネの幼苗を用い、サルチル酸(SA)処理の有無による低温処理時の低温障害の程度および活性酸素消去系の各酵素の活性の違いを検出し、SAの効果を確認することである。イネには低温感受性のアキタコマチと低温耐性のコシヒカリを用いた。分析した活性酸素消去系の酵素は、SOD(Superoxide dismutase), CAT(Catalase), GR(Glutamine rectase), GPX(Glutathine perioxidase)である。基本的に昨年度の成果の追確認の結果となった。概要は以下のとおりである。 1.葉での低温障害にはSA処理の顕著効果は確認できなかった(7日の低温処理で、SA処理により、若干の障害の低減はみられた)。根では両品種とも、1日間の低温処理後にはSA処理により若干の障害の増加がみられたが、7日間の低温処理後はSA処理による顕著な障害抑制がみられた。 2.SA処理後、通常気温下で、アキタコマチの根の場合、SOD、CAT、GPX、GRの活性が上昇し、SOD、GPX、GRの上昇は7日後にも確認できた。しかし、コシヒカリではそのような効果は確認できなかった。 3.1日の低温処理後にはアキタコマチの根で、SA処理によりSOD、CAT、GPXの活性の顕著な低下がみられ、SODとGPXの低下は低温処理7日後にも観察された。しかし、この低温処理期間中、GR活性はSA処理により顕著に増加した。 以上の結果は、常温時のSA処理によりイネの根の低温耐性は増加すること、この増加はGR活性の増加による活性酸素消去系の活性増加によるであろうこと、葉ではこのような効果はみられないことが明らかとなった。
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