研究概要 |
茨城県潮来市において得られた掘削コアを対象とした、遺伝子解析に成功した。コア中の細菌分布については、およそ堆積物中に3x10^8〜8x10^6cells/cm^3の細菌が認められたが、間隙水中にはその1〜2%にあたる6x10^5cells/cm^3の細菌が分布していた。さらに、堆積物中の細菌のおよそ5%〜10%が活性を有していることが細菌細胞のRNA含量の測定から推察された。 次に、遺伝子解析によって以下の知見が得られた。ドメイン・バクテリアについて解析結果をみると、すべての深度でChloroflexi(クロロフレキシ)門が優占していた。Chloroflexiは古細菌に近い、系統樹の上で深いところで分岐し、4つのグループに分けられることが報告されている(Hugenholtz et al.,1998)。そのひとつがChloroflexi-3とまとめられる酸素非発生型の光合成細菌グループであるが、当然ながら地下環境からこのグループは見つからなかった。コアから得られたクローンは、Chloroflexi-1,-2,-4に分類されるが、データベースに登録されているこれらのクローン(遺伝子株)のほとんどは培養されていないことが大きな特徴である。もっとも浅い2.1m層から見いだされたChloroflexi-1は、環境中の汚染された場所から得られたクローンを多く含むという特徴がある。Chloroflexi-2のグループに分類されるクローンは全ての深度から得られたが、3.6mと6.1mから多く得られた。その類縁クローンは、冷湧水、メタン生産される環境やウラン鉱山から得られており、メタン酸化または硫酸還元反応、鉄酸化または硫黄酸化反応に関与する細菌であることが推察された。地下圏における微生物の地球化学的な作用に関する知見を得る上で重要な情報が取得された。
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