研究概要 |
本年度は,前年度夏季および春季のシネヘン・ブリヤート語を対象とした現地調査(於:中国内蒙古自治区呼倫貝爾市)によって得られた資料の分析を重点的におこない,さらに東京にて留学生からの聞き取り調査を夏季におこなった. 昨年度の現地調査では,音韻論,形態論にかんする聞き取り調査とテキスト収集をおこなったが,テキスト収集にやや不明確な箇所があったため,東京での調査においてデータを補完した.また,音韻論,形態論にかんする聞き取り調査の成果の一部を,第127回日本言語学会大会(於:大阪市立大学)にて,「モンゴル諸語の"particle"の自立性について」と題し,口頭にて発表をおこなった.また,この成果は「モンゴル諸語の'particle'について:シネヘン・ブリヤート語の事例から」(津曲敏郎編『環北太平洋の言語』第11号(2004年発行予定)所収)として,公表を予定している.この成果は,語形成研究をおこなう際の前提となる,「語」の定義をおこなったものであり,当研究課題の枠組みを決定づける指針として有意義な成果が得られたと考える. 留学生を対象とした東京での調査では,語形成法のひとつ,複合を対象として,その定義および音韻,形態,統語,意味の各側面における特徴を記述し,当該言語の複合法の概要をまとめた.そのほか,重複法,派生法に関する調査も同時におこない,一定の成果をあげることができた. また,夏季には上記調査に加え,モンゴル国ウランバートル市にて,当該研究に関連する資料収集をおこない,現地研究者からの情報提供を受けた. なお,以上の成果と,前年度の研究成果とをまとめ,刊行することを予定していたが,学位申請論文「モンゴル諸語の語形成について」として,来年度中の提出を予定している.
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