研究概要 |
まず,ゾルゲル法により溶融石英プリズム上に構築した比較的平坦な酸化チタン薄膜に色素分子を吸着させ,SFG振動分光測定により酸化チタン薄膜表面における分子の吸着状態を評価した。 具体的には、湿式太陽電池で有名なルテニウムのN3色素を酸化チタン薄膜に吸着させピコ秒のSFGシステムで評価した。N3に含まれる配位子の一つであるSCN伸縮に由来する強いピークが観測され酸化チタン表面にN3が吸着していることが確認された。ついで,高速ダイナミクスへの展開を計るためにフェムト秒SFGシステムによるN3の検出を試みた。しかし、フェムト秒システムではN3に由来するピークは検出できなかった。これはフェムト秒SFG測定に用いる可視光強度がピコ秒システムに比べて弱かったためと考えられる。また,N3はSFG活性な配位子であるSCNをふたつしか持たないためSCNがより水平方向を向いているために垂直方向のSFGがうまく観測できない可能性もある。そこで,2つのSCNにかわって4つのCNを含む別のルテニウム錯体を合成しこの色素をN3の代わりにして測定を行ってみた。しかしながらこの錯体色素はピコ秒,フェムト秒いずれのシステムでも特徴的なSFGピークを示さなかった。これはこの色素の吸収波長とSFG測定に使用する可視光との共鳴が小さいために十分なSFG強度が得られなかったためと考えられる。フェムト秒システムでSFGが観測できなかったことから表面ダイナミクス測定は中止した。 一方、酸化チタン表面の水の構造のについて詳細に調べた。溶融石プリズム上に製膜した酸化チタン薄膜と電解質溶液の界面で水の構造のpH依存性をSFG測定により明らかにした。 この結果から酸化チタンの表面pKaが約6であり,中性付近では水がやや乱れた構造をしておりpHに対して敏感に変化することが明らかとなった。
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