研究概要 |
これまでに、フロリダ産タンゼリンbrown spot病菌からACT毒素生合成遺伝子クラスターの部分領域(33,974bp)を単離し、この領域内に含まれる5つのACT毒素生合成遺伝子は、本毒素部分構造であるデカトリエン酸生合成に関与することを示してきた。また、現在得ている5つの生合成遺伝子が、全て1.9Mbの小型染色体上に座乗していることを明らかにした。そこで次に、ACT毒素に特異的な構造部分に関与する酵素遺伝子群の単離を試みた。 始めに、タンゼリンおよびラフレモンの両植物に対して病原性を示すAlternaria alternata BC3-5-1-OS2A株が米国フロリダ州のカンキツ圃場から分離されたので、この菌株について解析を行った。BC3-5-1-OS2A株は,宿主特異的毒素であるACT、ACR両毒素を生産し、それぞれの毒素の感受性品種であるタンゼリンおよびラフレモンの双方に対する病原性を持つ。また、ACTまたはACR毒素生産菌のそれぞれのゲノムに特異的に存在する毒素生合成遺伝子またはDNA配列の双方が、BC3-5-1-OS2A株の小型染色体上に座乗していることを確認した。これらのことから本菌株はACTおよびACR毒素の両生合成遺伝子クラスターを有することが示唆された。そこで,本菌株のゲノムDNAを用いてゲノムBACライブラリーを作製し、ACT毒素生合成遺伝子ACTTRをプローブとしてBACクローン2H2を選抜した。このBACクローン2H2は、ACT毒素生合成遺伝子であるACTT1、2、3、R、5、6を含むことがPCRにより確認された。 現在、このBACクローン2H2の挿入ゲノム領域(約100kb)の全塩基配列の決定がすでに終了しており、シーケンス解析により新たな推定ORFが検出されている。これら新たなORFについては、ACT毒素生成菌ゲノムに特異的に存在するかどうかサザン解析を行い、ACT毒素生合成遺伝子クラスターに特異的なORFを決定し、標的遺伝子破壊によりACT毒素生成における各ORFの役割の解明を行っていく。
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