研究概要 |
ネパール山岳地帯の伝統的住宅を対象として,冬の温熱環境について換気・熱連成シミュレーションによる改善予測を行い,以下の結果を得た。 1.「基本モデル」の室内温熱環境を検討した結果,(1)住宅「モデルII」、(2)壁「モデルA」,(3)風圧係数「日本」,(4)風速補正「有」の組み合わせが最も適切である。 2.室温の実測値と計算値のRMSEは1.1〜1.8Kと小さく,伝統的住宅の室内温熱環境を予測することができ,「基本モデル」を用いて伝統的住宅の改善効果を検証できる。 3.「基本モデル」の換気回数は19〜211回/hと大きく,冬に多数の開口部が常時開放されている実態が示された。 4.伝統的住宅の開口部配置は,夜間の冷気侵入に役立っていることが,開口部「北側配置モデル」で確認された。 5.開口部の気密化により換気量を減少させることで,夜間の平均室温は「基本モデル」より「1F・2Fの隙間面積の削減」では2.1〜5.7K,「開口部開閉の制御」では0.1〜7.2K,「隙間面積の削減」では0.8〜2.6Kそれぞれ上昇する。 6.屋根,土間と壁の断熱化により夜間の平均室温は「基本モデル」より「屋根に木板層の設置」では0.2K上昇するが,「土間に木板層の設置」,「1Fの壁に木板層の設置」では室温上昇効果が見られない。しかし,木板層の表面温度は土間や粘土(壁)より高いと推測され,体感的に改善効果があると考えられる。 7.「総合改善+薪削減」で薪消費量が60%削減できると共に,夜間の平均室温が1.0〜4.0K上昇する。伝統的住宅の室内温熱環境は自然換気の影響が大きく,開口部の気密化,屋根の断熱化などにより換気量を減少させることで,室内温熱環境改善とエネルギー消費量削減が実現できる。
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