研究概要 |
元素の起源とその進化はビッグバンによる元素合成に始まり、恒星、新星、超新星などの天体中での原子核反応によって記述される。特に、核図表中の中性子過剰核側を数秒で走り抜け、数百種に及ぶ元素を合成する早い中性子捕獲過程(r過程)は注目を集めている。近年の天文観測と理論計算の結果、r過程では軽い中性子過剰核を含む反応の寄与が大きいことが示唆された。しかし断面積の実測によるデータが十分でないため、定量的に不定性が残る。本研究は軽い中性子過剰核を含む反応の中でも(α,n)、(p,n)反応に着目し、その断面積を系統的に測定することで宇宙における元素合成のシナリオを定量的に明らかにする。 軽い中性子過剰核を含む反応の中でも、安定核の存在しない質量数8の領域は中性子過剰核を経由しなければさらに重い元素を生成することができないため、この領域の短寿命核を含む反応の断面積の測定が強く望まれている。本年度は質量数8を超える反応のひとつである^8Li(α,n)^<11>B反応の断面積の測定と解析をおこなった。測定は2段階に分けて行い、まずは重心系で2.7〜0.7MeVの領域について、さらに16年度終わりには1.5〜0.3MeVについての測定を行った。前半の測定データを用いて解析手法を確立した。またその結果からは過去に行われた測定値との食い違いを明らかにすることができた。この結果を国際会議(6^<th> International Conference, Radioactive Nuclear Beams, ANL, USA)において発表した。また用いた検出器系についてもその性能評価をまとめ、論文として投稿した。後半の実験は現在解析中である。 さらに^6He(α,n)、^<12>B(α,n)反応測定のため、^6Heおよび^<12>Bビームの生成実験を行った。いずれも断面積測定に十分な強度と純度を持って生成することができた。
|