研究概要 |
本年度の研究目的は、昨年度科学研究費補助金「特別研究員奨励費」を通して習得した政党マニフェスト(政策綱領)の比較分析手法を実践することであった。それゆえ、本年度は、英国エセックス大学データ・アーカイブに研究出張し、連合型民主主義諸国における政党マニフェストを収集・分析した。同大学のデータ・アーカイブには、1945年以降のOECD諸国を中心とする25カ国の政党マニフェスト資料が所蔵されており、この中から、研究対象国である連合型民主主義諸国のベルギー、スイス、オランダ、オーストリアにおける環境政党のマニフェストを重点的に収集・分析した。その結果、マニフェストがカバーする「政策の幅」と選挙における成功の間に一定の関係があることが明らかになった。研究の成果は、2003年9月に開かれたヨーロッパ政治研究連合(ECPR : European Consortium for Political Research)の研究大会において報告された(Airo Hino, 'Recipes for Success : Comparative Analysis of Green Party Manifestos' in Panel 8-7 : Comparative Environmental Politics of the 2^<nd> ECPR General Conference held at Marburg Phillips-Universitat, Germany, 18-21 September, 2003.)。また、同報告を通じて、新党台頭を説明する上で、既成政党のマニフェストが持つ重要性を再認識する機会を得た。それゆえ、連合型民主主義諸国の代表国であるベルギーをケース・スタディーとして、既成政党や環境政党などの新党がいかなる利益や価値観を代表しているのか、そして、同国における政党システムがどのような政策軸によって規定されているのかについて分析し、その成果を、『早稲田政治公法研究』(第74号)にて発表した。
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