研究概要 |
本年度は,昨年度までに進めた研究をさらに発展させ,以下の成果を得た.滋賀県曽根沼堆積物の微粒炭分析をさらに詳細に行い,曽根沼周辺の過去約1万5000年前からの詳細な植物燃焼史を明らかにした.さらに,反射率測定や微粒炭の粒度区分を行い,その火災形態や燃焼地域についても考察し,明らかにした.これらの成果は,2003年日本第四紀学会大会で発表し,現在公表論文にすべく準備中である.さらに,近畿に分布する黒色土中の微粒炭の研究を進めている.滋賀県土山町,奈良県曽爾村などに分布する黒色土から微粒炭を検出し,黒色土形成時に植物燃焼が起こっていたことを明らかにした.特に土山町の黒色土については放射性炭素年代測定を行い,その形成時期が縄文時代であることを明らかにした.以上の成果は,以前行った琵琶湖堆積物の分析結果などとともに,日本植生史学会第18回大会のシンポジウムにおいて発表した.これらの研究成果についてはさらにデータを収集し,論文化する予定である. また,大阪城堀堆積物から採取した炭の化学分析・反射率測定を行い,その燃焼温度を推定した.そしてこれらの炭が,木片の燃焼によって生成されたことを明らかにし,その成因として大阪城の火事の可能性について言及した.以上の大阪城堆積物中の炭の分析結果などについては,日本文化財科学会第20回大会で発表した. この他,大阪城堀堆積物の微粒炭・球状炭化粒子分析結果をもとに,過去数百年間の大阪城周辺の植物燃焼史.化石燃料燃焼史を明らかにした.これらの成果は,村上ほか(2003,2004)で発表されている.
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