研究概要 |
本研究は水の光分解反応に対して活性をもつ新規な光触媒の開発を目的とし、d^<10>電子状態を持つIn^<3+>,Sn^<4+>,Sb^<5+>を骨格イオンとして含む酸化物の光触媒作用について調べた。 d^<10>電子状態の典型金属イオンであるIn^<3+>から構成される酸化物Sr_<1-x>M_xIn_2O_4(M=Ca,Ba)、NaInO_2およびLaInO_3がRuO_2を担持することにより水の光分解反応に対して活性な新しい光触媒となることを示し、これらのIn酸化物を構成する歪んだInO_6八面体内部の双極子モーメントが光励起電荷の分離に有効に作用し、光触媒活性を発現するという機構を明らかにした。またIn^<3+>と同様にd^<10>電子状態であるSn^<4+>およびSb^<5+>から構成される典型金属酸化物の光触媒作用について調べ、M_2SnO_4(M=Ca,Sr)、NaSbO_3、CaSb_2O_6、M_2Sb_2O_7(M=Ca,Sr)が助触媒RuO_2担持により水の光分解反応に対して活性を持つ新しい光触媒となることを示した。 さらに異なる電子状態の金属イオンを組み合わせることによる複合化効果に着目し複合型酸化物Ba_3In_2Zn_5O_<11>、LinGeO_4、AgInW_2O_8、In_6WO_<12>およびPbSb_2O_6に助触媒RuO_2担持により、水の光分解反応に対して活性な光触媒となること示した。バンド計算により、異なる電子状態の複合化により伝導帯のみならず、価電子帯の軌道も混成を生じ、バンドギャップを狭くできることを示した。さらに酸化物の代わりにd^<10>典型金属窒化物であるGe_3N_4が、RuO_2担持により、窒化物として初めて水の分解反応に対して活性な光触媒となることを見出した。 以上のように、本研究ではd^<10>電子状態をベースとする金属酸化物、窒化物が水の分解反応に対して活性な新しい光触媒となることを見出し、水の光分解反応を進行する新しい光触媒グループとなることが結論される。
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