研究課題/領域番号 |
02J05179
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
社会学(含社会福祉関係)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉本 学 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2004年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2003年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2002年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | ジンメル / 相互作用 / 個人と社会 / 物象化 / 個人化 / 文化の悲劇 / 個人主義 |
研究概要 |
本研究は、ゲオルク・ジンメルの社会学的論考のなかに、客観的な実在としての「社会」生成の理路を探り、それをかれの思想的全体像と関連づけて把握しようとする試みである。前年度までの研究において、ジンメルの形式社会学が、かれの哲学的文化論における「文化の悲劇」と平行的に、人びとの協働すなわち相互作用から「社会」が物象化・自立化し、人びとに対して対立的・拘束的に現れる契機に着目したものである、ということが明らかになった。 本年度においては、こうした知見をふまえ、ジンメルの社会学理論が現在の社会理論および社会分析にたいしてどのような関連をもっているかについて考察した。 第1に、本研究で提起された知見が、マルクスを疎外論から物象化論へと読み換えた廣松渉の業績と、類似性をもっていることが指摘できる。すなわち、ジンメルもこれまで、主に哲学的文化論に焦点をあわせることによって疎外論の文脈で解釈されることが多かったが、相互作用を基底として社会(および社会にたいする個人)の生成をみる形式社会学の観点を、ジンメルの哲学的な問題意識へと結びつけることにより、ジンメルが「主体が客体化する」という「疎外」を問題としたのではなく、「関係が物のようにあらわれる」という「物象化」を問題にしていたことが、明らかになる。 第2に、ジンメルの問題意識であった「個人と社会の葛藤」は、現在の社会状況を批判的に分析するための準拠点となり得る。これは一見古い図式と思われるが、今日、個人内部の葛藤として経験される事柄が、ある意味で諸個人が社会的な全体から切り離されたこと(個人化)の帰結であること、さらにその結果として、諸個人が自己自身の内面に関心を向ける、あるいは親密な他者との間の人格に志向した相互作用に意味をみいだすことにより、公的領域や公的問題にたいする関心が失われてきたこと。これらのことを理論的に考察するための視座を、N・ルーマンやJ・ハーバーマス、Z・バウマンといった近年の理論を参照しながらジンメルの所論から抽き出したことも、成果のひとつである。
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