研究概要 |
近年の情報通信量の急速な増大に伴い,光通信技術への要求は日々高まっている.ローカルエリアネットワークなど短・中距離光通信の光源には,シリカファイバとの整合性,低消費電力,大量生産の容易さなどの観点から,発振波長1.3-1.55μmの長波長帯面発光レーザをGaAs基板上で実現することが最適である.本研究では,GaInNAs半導体により量子ドット構造を形成することが長波長化のために最適であると考え,GaInNAs量子ドットを提案し,長波長帯レーザへの適用可能性検討を目標とした. 化学ビーム成長(CBE)法により,GaInNAs量子ドット構造の形成特性解明と最適条件の探索を行った.GaInNAs量子ドットでは,窒素を含まないGaInAs量子ドットに比べて,微小化,高密度化されることを明らかにした.また,窒素組成の増加に伴い,ドット形状の急激な変化を観測した.これらの現象は窒素による,III族原子の表面拡散長への影響であると考えられる.これらの結果から,レーザ実現に必要な長波長化と高利得を達成するためには,低温成長が有効であることを明らかにした.続いて,GaInNAs量子ドットの発光特性を評価した.成長後の熱アニール効果として,GaInNAs量子井戸と同様な発光強度の増加傾向が見られることから,成長時に形成される非発光中心の低減に有効であることを示した.一方,熱アニールに伴う発光波長の短波長化を観測し,その傾向がGaInAs量子ドットと同様であることから,表面積が大きいドット構造の原子相互拡散の影響が支配的要因であることを明らかにし,デバイス応用上の重要な知見を得た. 本研究により,GaInNAs量子ドットを提案し,CBE法による結晶成長特性と光学的特性の評価から,GaInNAs量子ドットの長波長帯レーザへの適用性を明らかにした. 本研究に関連して,筆頭著者論文2通(発表予定),共著論文3通,国際会議4件,国内学会1件の発表を行った.
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