研究概要 |
1.Aサイトオーダー型ダブルペロブスカイト鉄酸化物BaREFe_2O_<5+δ>では、混合原子価・分離及び整列転移の1種である"Verwey型転移(転移温度T_V)"が起こる。この転移では構造変化を伴うが、その転移と構造の関係を見出すため、300Kにおける静水圧下放射光粉末X線回折により結晶構造の変化を観測した。その結果、格子定数a, b, cとT_Vは圧力上昇に伴って減少し、転移は約2.6GPaで消失した。更に斜方晶パラメーターs(≡(a-b)/(a+b))に関連してT_Vが変化していることが分かった。このことから、この転移は電荷整列構造を強く反映して起こることが分かった。 2.上述の静水圧下の観測では、その実験の性質上正確な原子位置が求められなかった。そこで2種類の化学圧力手法、即ち(Ba_<1-y>Sr_y)SmFe_2O_<5.0>(0【less than or equal】y【less than or equal】0.15)とBaREFe_2O_<5.0>(RE=Gd, Eu, Sm)の300Kにおける放射光粉末X線回折により結晶構造解析を行った。その結果、それぞれのサイトのイオン半径が小さくなるのに伴い、T_VはBaREFe_2O_<5.0>では増加、(Ba_<1-y>Sr_y)SmFe_2O_<5.0>では減少した。またT_Vの変化に伴いそれぞれの結晶構造パラメーターも系統的に変化しているが、静水圧下の観測と同じ傾向を示したのは斜方晶パラメーターsのみであった。このことから、この転移では電荷整列に伴いd_<xz>軌道が整列していることが分かった。
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