研究概要 |
エンドグリコセラミダーゼ(EGCase)は、スフィンゴ糖脂質の糖鎖-セラミド間のグリコシド結合を加水分解する酵素で、放線菌Rhodococcus sp.に初めて見いだされた。一方、真核生物由来のEGCaseは遺伝子や機能がこれまで全く明らかにされていなかった。研究代表者はEGCaseが刺胞動物で強く発現していることを見いだし、真核生物としては初めてユウレイクラゲ(Horibata, Y.et al.J.Biol.Chem.275,31297-31304,2000)とヒドラから新規EGCaseのcDNAクローニングを行った。本年度の研究では、ヒドラを用いてEGCaseの生物機能を解析した。ヒドラEGCaseはpH3.0-4.0で最大活性を示し、in situ hybridizatiohおよび免疫組織学的検討から、内肺葉、特に消化細胞に局在していた。^<14>Cで標識した糖脂質を用いてin vivoでの糖脂質代謝を調べた結果、糖脂質はEGCaseによって分解され、さらにセラミドはセラミダーゼにより脂肪酸とスフィンゴシンに分解され、続いて脂肪酸はグリセロ脂質の合成に利用された。哺乳類では糖脂質の糖鎖部分はエキソグリコシダーゼによって代謝されるが、ヒドラではEGCaseによって遊離糖鎖にされた後、一連のエキソグリコシダーゼにより分解されたことから、ヒドラにはEGCaseを介した新奇な糖脂質代謝経路が存在することが証明された。 リソソーム内のスフィンゴ脂質分解酵素が遺伝的に欠損するとスフィンゴリピドーシスと呼ばれる疾患を生じる。この疾患の遺伝子治療のモデル系を構築するために、リソソームに発現するキメラEGCaseおよびキメラスフィンゴミエリナーゼ(SMase)を作製し、スフィンゴ脂質の分解活性を培養細胞を用いて調べた。今回、培養細胞内ではキメラEGCaseの十分な活性は認められなかったが、キメラSMaseは強い活性と細胞内スフィンゴミエリンの減少を示し、酸性SMase欠損病であるニーマンピック病の遺伝子治療への応用が期待された。
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