研究課題
特別研究員奨励費
フォークヘッド型転写因子FOXOファミリー(FOXO1,FOXO3,FOXO4)は、ストレス抵抗性獲得や分化制御など様々な細胞機能制御に関わることが明らかになりつつある因子である。骨格筋組織の加齢や炎症による萎縮は酸化ストレスによって誘導されるが、我々は前年度までに、この酸化ストレスによる筋管細胞の萎縮誘導と分化抑制にFOXOが重要な役割を果たすことを示した(投稿準備中)。そこで、今年度は酸化ストレスがFOXOを活性化する機構について解析を行った。FOXOの活性制御機構として大きなものは細胞内局在変化である。これまでにIGF-1/PI3K/Aktシグナル伝達系によるリン酸化によってFOXOが核外排出され活性を失うことが分かっているが、我々は、IGF-1の存在下においても酸化ストレスを与えることによってFOXOの速やかな核蓄積が起こることを見いだした。このとき、Aktによるリン酸化部位のリン酸基が失われていることが分かり、脱リン酸化反応がFOXOの核蓄積を促進していることが示唆された。この核蓄積と脱リン酸化反応はプロテインフォスファターゼの阻害剤で細胞を処理することによって抑制された。また、FOXOの転写活性も同様の阻害剤で抑制された。さらに、FOXOとプロテインフォスファターゼの結合も確認できたことから、酸化ストレスはFOXOの直接の脱リン酸化を誘導することによってFOXOの核蓄積を促進し、活性化させることが明らかとなった(投稿準備中)。酸化ストレスを受けた細胞では、このメカニズムによってFOXOの活性化を介した細胞周期の停止とDNA傷害の除去およびROS除去タンパク質の発現誘導による細胞のストレス抵抗性獲得が行われていると考えられる。また、酸化ストレスを受けた骨格筋組織の萎縮においても同様のシステムが機能していると考えられる。
すべて 2005
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