研究課題
特別研究員奨励費
環境ホルモン戦略計画SPEED ‘98に記載された化学物質のうち、ペンタクロロフェノールとフタル酸ブチルベンジルの3週間にわたる慢性曝露はWistar系成熟雄性ラットの甲状腺機能とストレス調節系に影響を及ぼすこと、また胎生期から授乳期にかけてのペンタクロロフェノールの慢性曝露により母ラットと3週齡の仔ラットの甲状腺ホルモン(総サイロキシン)濃度が減少するが12週齡では回復すること、12週齡におけるストレス応答には影響を及ぼさないことを昨年度までに示した。研究計画に則り、今年度は甲状腺ホルモン応答遺伝子の発現に対する化学物質の影響を検討した。ペンタクロロフェノールを胎生期から授乳期にかけて曝露された仔ラットの前頭葉皮質において、甲状腺ホルモン応答遺伝子である甲状腺ホルモン受容体βとニューログラニンの遺伝子発現をリアルタイムPCRで検討した。その結果、PCP曝露雌性仔ラットにおける両遺伝子の発現が、対照群に対し有意に増加した。甲状腺ホルモン受容体βとニューログラニンどちらも神経の発達に関与していることが知られ、その変異は知能・気分障害を引き起こす。従ってPCP曝露によりこれら遺伝子の発現に変化が生じたことは、中枢神経系の機能が障害された可能性を示している。以上の研究より、本実験で用いた内分泌かく乱化学物質の一部は甲状腺機能を低下させること、母ラットに曝露することで仔ラットの甲状腺機能も低下すること、ストレス応答には影響を与えないが、神経系の発達には影響を与えることなどが示唆された。
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