研究概要 |
白血病におけるWT-1のように、近年いくつかの造血器腫瘍において免疫療法の標的として有望な腫瘍関連抗原が同定されつつある。今回われわれは未だ特異的な腫瘍抗原が同定されていない悪性リンパ腫に着目し、リンパ腫細胞に特異的な細胞障害性T細胞を樹立する研究を行なった。リンパ腫細胞における免疫グロブリンの相補結合領域(CDR)配列は個々の腫瘍における特異性が高く、リンパ腫細胞のみが持つ腫瘍特異抗原と考えられる。我々は数例の悪性リンパ腫症例より腫瘍組織を採取しCDRを含む配列を増幅レトロウイルスベクターへの組み込みの後に患者由来CD34陽性細胞へ遺伝子導入を行なった。種々の条件設定を行ないつつ、腫瘍特異抗原を発現する樹状細胞を誘導している。今後、患者T細胞との培養によって腫瘍特異CTLを樹立する計画である。 一方で臨床応用を念頭において、抗腫瘍効果の中心を担うT細胞の大量培養系の確立も行なった(Kaneko et al.,11^<th> annual congress of European Society of Gene Therapy, Edinburgh, UK, 2003)。大量培養の過程においてT細胞の有する細胞障害性が低下することが確認されたため、それを補うべく細胞障害性分子(TRAIL, perforin)を強制発現する患者T細胞を作成した。これらの細胞がHLA拘束に細胞障害性を増強させるか、また先ほどのCDR発現患者樹状細胞で刺激することによって、患者リンパ腫細胞の制御効果を持つかどうかをin vitroならびにin vivoで検討中である。
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