研究概要 |
機能性物質として熱電変換材料、固体電解質型燃料電池、非鉛系圧電体の候補物質、関連物質について電子構造と物理量を第一原理から計算しその機能性発現のメカニズムについて解明し、より高性能な機能性物質の設計指針を得た。 ・CeRhAsとその関連物質の電子状態と熱電能、酸化物強相関系の電子状態 昨年度と同様にスピン軌道相互作用を含んだFLAPW法を用いてCeRhAs,CeRhSb,CePtSn,CeNiSnについて電子状態計算をおこない、熱電能の違いのメカニズムについて研究を行った。特に、Ce 4fの部分状態密度をJz成分に分解することで、軌道の異方性と格子系の関係を示し、フェルミ準位近傍の電子状態と熱電能が構造にによってどう制御できるかを示し、この系列物質においてゼーベック係数を大きくする指針が得られた。また、CeRhIn,CeRhSnについても電子状態計算をおこなった。 これらの結果は国際会議SRSES2003,日本物理学会にて発表を行い、JPSJの論文にまとめた。 電子状態計算の結果は光電子分光の実験結果と比較をおこない、よい一致をしめした。 また、酸化物系では金属-絶縁体転移を起こすTl_2Ru_2O_7の電子状態について光電子分光の実験と電子状態計算の結果を比較し、フェルミ準位近傍の電子状態と伝導性について新しい知見を得た。この結果は共同研究者によってPRBの論文にまとめられた。 ・超イオン導電体AgIとその関連物質の電子状態とイオン性 超イオン導電体についてその基本的な電子状態を求め、さらにベリー位相の方法からイオン性を定量的に評価する有効電荷、局在長を求めた。有効電荷はAgIの構造の不安定性と巨大なイオン伝導率との関連を示唆し、今後さらに大きなイオン伝導率を持つ物質を探す指針を構築した、これらの結果は超イオン導電体物性研究会、日本物理学会にて発表した。 ・非鉛系圧電体Na_<0.5>Bi_<0.5>TiO_3(NBT)とPbTiO_3電子状態と有効電荷 鉛を含まない圧電物質ついて基本的な電子状態と圧電機能の発現のメカニズムについて研究した。 鉛を含むPbTiO_3の電子状態と比較をおこない、Biの持つ有効電荷の大きさから、他のBi系の誘電体でも大きな格子の不安定性を示すことが予測されることを示した。これは中国・四国・九州強誘電体セミナーにて招待講演を行った。また、PbTiO_3については共同研究者によってMRSで発表され、プロシーディングスにまとめられた。
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