研究概要 |
主要作物の一つであるイネの形態や発育様式の人為的改変を展望するためには,その発育過程を制御する遺伝的プログラムの理解が必要不可欠である.そこで,「草型育種」の主要なターゲットである草丈や葉身傾斜角決定を支配するジベレリンやブラシノステロイド関連変異体(gamyb,brd1)の解析を行った.brd1変異体は,極矮性で葉身は奇形を伴った濃緑色であり,ラミナジョイントは直立葉の形態を示した.細胞レベルでの形態を観察したところ,節間部分では,野生型で観察されるような細胞が縦方向に秩序正しく配行される介在分裂組織の分化が観察されず,同様に葉鞘・葉身の表層細胞は,縦方向の細胞伸長が著しく抑制されていた.本変異体ではC-6位酸化酵素であるDWARF遺伝子に変異が確認されたため,BRD1はC-6位酸化酵素をコードし,細胞の配列や伸長方向の制御を通して茎葉の形を決定することが判明した.また,gamyb変異体の解析結果から,ジベレリンシグナルにおいて最初に見つかった因子であるGAMYB遺伝子は,胚乳における貯蔵物質の分解酵素遺伝子群の発現誘導とともに,花器官における発達にも必須であるが,花芽誘導には影響を与えないことが明らかとなった. 一方,作物の生産性を高めるためには,地上部諸形質の改良のみならず,土壌資源の効率的な獲得を目指した根系構造の改良も極めて重要である.そこで根の発生・分化に関わる短根型変異体rt,および冠根欠損型変異体crl1の原因遺伝子の単離を試みた.その結果,RT遺伝子はArabidopslsのcell wall assemblyに関与するKORRIGAN遺伝子に高い相同性を有し,1,4-β glucanaseをコードすること,およびCRL1遺伝子はArabidopsisのLATERAL ORGAN BOUNDARIES遺伝子に高い相同性を示し,根形成能力を持つ組織特異的に発現することを明らかにした.
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