研究課題
創成的基礎研究費
地球温暖化と関連して、二酸化炭素、メタン、フロンガス等の大気中微量ガスが地球の温暖化を促す温室効果ガスとしてその増加が注目されている。これらの微量ガスの増加は、人間活動の地球規模での拡大に伴うものであり、将来陸上生態系並びに気候変動に大きな影響を及ぼす可能性がある。本研究は、このような温室効果ガスの発生と分布を明らかにし、日本およびタイを中心に連続モニタリングおよび空間的・時間的濃度分布の測定を行い、将来の環境保全対策を明らかにすることを目的としている。現在行っている主な研究としては、(1)名古屋市における二酸化炭素およびメタンの連続モニタリング、(2)日本におけるフロンガスの経年変化の測定、(3)稲作期間における水田からのメタンの発生量測定と発生機構、(4)バンコックを中心とするタイ国大気中のメタンの測定、(5)タイ国の水田土壤からのメタンの発生機構、である。(1)については、1990年8月より測定を開始し、二酸化炭素とメタンの24時間連続測定の結果をもとに、これらの微量ガスの日間、月間、年間変動を明らかにしつつある。日間変動では、風の弱い日には夜間いずれのガスも濃度が高くなり、都市大気の成属化との関連があることが判明した。日中は濃度はグロ-バルな平均濃度に近づくが、その場合でも平均濃度より高く、都市にはこれらのガスの発生源があることを考慮することが必要である。(2)については、巻出・富永のグル-プが10年以上にわたり日本各地でフロンガスの濃度測定を行っているもので、フロン11、フロン12の大気濃度が毎年4%ずつ上昇している結果を出してきたが、昨年あたりから上昇が純化する傾向が観測されている。これは世界的な特定フロンの規制を反映しているのではないかと考えられる。(3)については、安城(愛知県)および福島の土壤を使って稲作のポット栽培実験を行い、施肥、稲わら、たい肥の投与した処理区毎に稲作期間におけるメタンガスの発生量の測定を行っている。さらに、水落ちなどの水管理による影響も調べている。その結果、稲穂発芽前の前期と後期において比較すると、稲わら処理区以外はメタン発生量は稲作前期は低いのに対して、後期においてはいずれの処理区でも発生量は多く、かつほぼ同じレベルとなった。また水落ちした場合には、その後のメタン発生は非常に低くなることも判明した。これらの結果は、水田からのメタンの発生は、施肥など処理並びに水管理によってある程度コントロ-ルできることを示している。今後はこのような測定を実際の水田において実施する予定である。(4)と(5)については、今年度チュラロンコン大学、カセサ-ト大学(バンコック)にガスクロマトグラフ分析装置を持ち込み、測定を開始しはじめ、現在予備的な実験を開始した段階である。バンコックの大気では汚染した運河域においてメタン濃度が高い傾向が観測されている。なお、平成4年度からインドネシアの2ヶ所で水田からのメタン発生の実施を行うように、現在調査・準備中である。
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