研究課題/領域番号 |
02NP0205
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研究種目 |
創成的基礎研究費
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
高井 康雄 東京農業大学, 農学部, 教授 (40011796)
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研究分担者 |
和田 英太郎 三菱化成生命科学研究所, 部長
鈴木 邦雄 横浜国立大学, 経営学部, 助教授 (30018048)
長野 敏英 東京農業大学, 農学部, 助教授 (10012006)
荻野 和彦 愛媛大学, 農学部, 教授 (90026394)
久馬 一剛 京都大学, 農学部, 教授 (80027581)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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キーワード | 熱帯林 / 熱帯雨林 / 湿地林 / 森林生態学 / 植物生態学 / 湿室効果ガス / メタン / 林冠生物学 |
研究概要 |
平成2年度は、全体として海外における調査研究の準備、とくに東マレ-シア・サラワク州およびタイ・ナラチワ州に長期観察・定点観測の基地の設定、外国人研究者との今後の熱帯林研究の方向についての検討またインドネシアの熱帯林の共同調査が中心となり、一部の定点観測及び調査を開始した。研究実績を要約すると次の如くである。 1)サラワクの熱帯雨林生態系がどのような生物過程によってささえられ、機能しているかを明らかにすることを目的として、サラワク州ミリ市近傍のランビア国立公園内に50ヘクタ-ルの大面積の長期観測調査区の設定を開始し、平成3年度前半にこれを完了する予定である。ここでは、多雨林の群集・個体群変動の解析、主要構成種の生態生理的特性の解明、林冠構造と根圏の生態の解析及び微気象・炭素循環の観測などを行うことを予定している。 2)ナラチワ湿地林においては、気球法と即地調査を結合した湿地林生態系の劣化と再生過程の解明のための長期観察調査区を設置しつつある。ここでは、植生図の経時的変化を追跡し、また森林・草原・開発地における環境特性を把握するために、気球による微気象測定を開始しており、これによって熱・水分・二酸化炭素などの物質輸送量の測定をおこなう。 3)熱帯林、とくに東南アジアにおける湿地林の嫌気的環境、また伐採・焼畑地における白蟻などの土壌動物の腸管は温室効果に関与するメタンガスの重要な発生源の一つであると考えられるが、東南アジアにおけるこれら熱帯林生態系のメタン発生源としての寄与に関してはほとんど研究されていない。本研究では、湿地林、二次林及び水田に定点プロットをおき、年間を通じてメタン及び亜酸化窒素の発生量の観測を行って、これらのメタン発生源としての評価及び土地利用の影響を解析、またそのガスの安定同位体自然存在比の測定を実施して代謝経路を明らかにする定点観測を開始した。本年度は林内、田面の気泡ガス及び田面水の採取を行い、溶存メタン、亜酸化窒素、酸素、pH及び気泡メタンのδ^<13>( ^<13>C含量)の測定を行った。その結果として、メタンのδ^<13>Cについて、水田気泡メタンより林内で採取したものが有意に低い値を示すことが認められた。これは、二つのメタン生成経路ー酢酸のメチル基転移反応と炭酸還元ーのうち、炭酸還元系が湿地林内でより活発に起こっていることを示唆するものである。 4)日本とインドネシアにおいて、外国人共同研究者と熱帯林研究について相互理解と将来協力のための会議を持ち、またスマトラ島の熱帯雨林の共同調査を実施した。これらの国際協力の機会に、東南アジアの熱帯雨林は世界で樹種相がもっとも多様な森林で、樹高が60メ-トルをこえる巨大高木層以下、林冠が幾重にも重なる重層構造によってでき上がっており、林冠層に三次元的に進入して調査活動できるための技術の開発が重要であるという認識に達した。
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