研究課題/領域番号 |
03041014
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 謙一郎 東北大学, 理学部, 教授 (00004276)
|
研究分担者 |
DELGADO Hugo メキシコ大学, 地球物理学研究所, 助手
URRUTIAーFUCU フクガウチ メキシコ大学, 地球物理学研究所, 教授
伴 雅雄 山形大学, 理学部, 助手 (50208724)
長谷中 利昭 東北大学, 理学部, 助手 (50202429)
大槻 憲四郎 東北大学, 理学部, 助教授 (70004497)
吉田 武義 東北大学, 教養部, 助教授 (80004505)
藤巻 宏和 東北大学, 理学部, 助教授 (90133933)
URRUTIA-FUCUGAUCHI J. Instituto de Geofisica, Universidad Nacional Autonoma de Mexico Professor
|
研究期間 (年度) |
1991
|
研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
|
配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1991年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
|
キーワード | メキシコ / 沈み込み帯 / リフト / 地殻構造 / スコリア丘 / 盾状火山 / カリウムーアルゴン年代 / 比較島弧論 |
研究概要 |
沈み込み帯にみられる火山の活動形態、マグマの化学組成は多様である。この多様性はマグマの生成条件の違い、マグマが地表に達するまでの過程の違い、例えば地殻の応力場の違いなどを反映している。私たちはマグマの化学組成の多様性に着目した比較島弧論に取り組み、マグマの生成条件、島弧の発達史についてのモデルに制限を加え、マグマ生成論に寄与しようと考えた。調査地域に選んだメキシコ西部のミチョアカン、グアナフアト、チャパラ地域では四国と同じくらいの広さに千個を超える小規模のスコリア丘や300個を超える中規模の盾状火山などの単成火山が分布しており、日本に見られる火山活動とは極めて異なっている。メキシコ西部ではリフトと呼んで、大陸が割れて広がりつつあり地域が三重会合点を作っていることが提唱されている。その一つが調査地域内に地溝系を作っており、日本海が拡大していた時期の東北日本と似通っていると考えた。 私たちの調査では構造地質、岩石学、地球化学、カリウムーアルゴン年代、古地磁気、重力、地磁気測定に重点をおいた。中でも比較島弧論を研究する上では年代のデ-タが不可欠であるので、地形による火山の相対年代の推定に加えて、火山岩のカリウムーアルゴン年代を測定し、火山岩の古地磁気測定でも年代に制限を加えることを重視した。 地溝の発達したチャパラやグアナフアト地域での断層の解析や地構内の堆積物の調査からは最近においてリフトの活動が起こった証拠を見いだすことはできなかった。また日本海拡大時の東北日本に見られるような急速な沈降運動も見いだせなかった。さらに調査地域で採集し分析した火山岩の中にもリフトに特徴的な化学組成を示すものはなかった。調査地域に見られる地溝は開き始めたが、その後運動を止めてしまったフェイルド・リフトであるというのが私たちの結論である。 火山の年代測定からは調査地域内で百万年前を境に火山活動の場所が移動したというおもしろい結果が得られた。百万年以前に活動した火山は全て火山地域の北部、海溝から遠い地域に、百万年以降に活動した火山は全て火山地域の南部、海溝に近い地域に分布する。おそらく百万年前にテクトニクスの条件が変わったと考えられるが、そのが具体的にどのような現象かをつきとめるのは今後の課題である。また調査地域内には現在知られているスコリア丘や盾状火山よりも古い火山がある。現在はこれらの年代測定や化学分析を実施中で、火山地域における長期にわたる火山活動の変遷を明らかにしようとしている。 調査地域には大きさの異なるスコリア丘と盾状火山の活動が見られるが、それらの分布はフラクタルであるという解析結果が得られた。これはマグマを地表に運ぶ火道の分布もフラクタルであることを示し、マグマの運搬は多孔質媒体中を移動する流体の移動に近似できるという興味ある結果を示している。 これまでに化学分析を行った火山岩試料の中から極めて未分化な組成のものがいくつか発見された。島弧を横切る方向のマグマの化学組成の変化も東北日本などとは異なっている。さらに化学分析を増やし、地球物理デ-タを組み合わせて東北日本の火山との共通点、相違点を検討すれば、マグマの発生と運搬のモデルや島弧発達史もでるの重要な制限を加えられると考えている。 メキシコ側の研究分担者による重力デ-タのコンパイルはメキシコ西部に厚い下部地殻が存在するという非常に貴重な結果をもたらせてくれた。日本と異なりメキシコでは信頼おける地殻の厚さの推定値が少なかったので、今回得られた地殻構造のモデルはマグマ発生論などに重要な制限を加える。 科学的な成果とは別に日本の火山研究者がメキシコにおいて見渡す限り火山また火山という光景を目に出来たことは良い体験であった。私たちの調査はまた日本とメキシコの球球科学研究者の間に有意義な研究交流の機会を与えてくれた。これを機会に両国の研究者の活発な交流が続くことを祈る。
|