研究分担者 |
CARMELITA VE フィリピン大学, アジア研究所, 助教授
CYNTHIA ZAYA フィリピン大学ビサヤ校, 水産学部, 助教授
ALICIA MAGOS フィリピン大学ビサヤ校, 人文科学部, 助教授
EFREN FLORES フィリピン大学ビサヤ校, 水産学部, 教授
NICOLAS CUAD フィリピン国立博物館, 人物学研究部, 研究員
CAROLYN SOBR フィリピン大学アジア研究所, 助教授
矢野 敬生 早稲田大学人間科学部, 助教授 (40200555)
関 一敏 筑波大学歴史, 人類学系, 講師 (50179321)
高桑 守 筑波大学歴史, 人類学系, 助教授 (60127769)
VELORO Cartelita Associate Professor, Asian Center, University of the Philippines
ZAYAS Cynthia N. Instructor, Department of Anthropology, University of the Philippines
MAGOS Alicia Associate Professor, College of Arts and Sciences, University of the Philippines
FLORES Efren Professor, College of Fisheries, University of the Philippines in the Visayas
CUADRA Nicolas Museum Researcher, Anthropology Division Philippine National Museum
SOBRITCHEA Carolyn Associate Professor, Asian Center University of the Philippines
CARMELITA Ve フィリピン大学, アジア研究所, 助教授
CYNTHIA Zaya フィリピン大学, ビサヤ校・水産学部, 助教授
ALICIA Magos フィリピン大学, ビサヤ校・人文科学部, 助教授
EFREN Flores フィリピン大学, ビサヤ校・水産学部, 教授
NICOLAS Cuad フィリピン国立博物館, 人類学研究部, 研究員
CAROLYN Sobr フィリピン大学, アジア研究所, 助教授
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研究概要 |
本研究は,フィリピンの中央・西ビサヤ諸島沿岸漁村および港町において,漁労活動を中心とした生活構造と水産物流通網における社会関係の両面を文化人類学的視点から解明することを目的としたものであった。その成果の概要は以下の通りである。 1. 日本側研究者(4名)とフィリッピン側研究者(6名)と緊密な討議を重ねながら調査を行ない,1992年7月および11月にフィリピン大学アジア研究所にて研究報告会をおこなった。また,1992年9月,11月,12月には同大学ビサヤ分校において口頭発表を行なった。さらに研究成果の一部を『族』(筑波大学歴史人類学系民族学研究室機関誌17,18,19号)に公表した。 2. 牛島はクワドラと連携を組んで,セブ島北部バンタイアン島スバ港町にて調査を行なった。この港町では,養鶏業などを営む農業企業家や鮮魚商人などの資金投下で成立する企業的な中規模なコブコブ漁業(施網漁業)を媒介にした統合がみられる。操業面のみならず,漁獲の処理に多大な権限を与えれている漁労長は,特権的な地位にある。しかも,漁労長はスバ出身者で独占されてさえいる。コブコブ漁業の乗組員はスバおよび近隣出身者で大半を占める。しかし,乗組み員は特定の漁船に固定されずに流動的に移籍する。他方,臨時の乗組み員,網の修繕に関わる者などの周辺の雇用の機会をも作り出す。さらに,関連産業としての干物加工に従事する多くの家族企業的な干物生産者を生み出している。これらの漁獲,干物の流通を通じて,顧客と得意先関係のネットワークが,信用取引や前貸しの連鎖と絡みながら生成されている。これを,「コブコブ複合」と呼ぶことができよう。 3. 関は,シキホール島にて,民俗宗教のもつ生態維持機能に注目した。とりわけ山間部においては,濃密な民間信仰がカトリック信仰とともに日常生活に浸透しており,島の伝統的生活様式の温存に貢献している。この山間部村落では,経済活動においては中間地域のマーケットを介在させた沿岸村落との交易関係が発達しており,呪術・医療・宗教活動においても濃密な海と山の交渉過程がみられる。こうした社会的ネットワークの形成維持要因としては,親族姻族関係のほかに,カトリック内の儀礼的親族関係が大きな役割をはたしている。この機構は,小島の社会経済的条件から必要とされる他島への移住のさいにも貢献している。人口圧に対応した生活戦略に選択の幅を与える機構といえよう。 4. 矢野,高桑は,フローレス,ザヤスと連携を組んで,パナイ島南岸および北東部漁村を調査した。パナイ島の海浜域に展開する伝統的漁撈活動の特質はその多様性にあり,いくつかの類別化すなわち仮説的モデルとしての干潟漁撈文化複合・珊瑚礁漁撈文化複合・砂浜漁撈文化複合が可能である。パナイ島における漁業の一つの問題は,伝統的漁撈活動と商業的漁業との非連続性,すなわち二重構造が併存し,前者から後者への移行・発展の可能性が閉ざされててる点である。商業的漁業の膨張や収縮に対応して,自給的・家計維持的な小漁家漁業は,低資本で誰もが参入できる可能性をもつがゆえに,それ自体の存続が保証されてきた。 5. マゴスはパナイ島およびギマラス島の四漁村を調査し,浅海域漁村と深海域漁村に対応した漁労儀礼の諸類型を抽出した。 6. ベロロは,パナイ島米作地帯からパラワン島沿海岸への移住者たちの村において,その生態環境に対する認識・空間観について調査し,漁民世界にありながら依然として農村的認識で海世界を把握する傾向を見いだした。 7. ソブレチアは,ボホール島にて,生活史を中心として漁家の生計活動における性差に基づく役割分担について調査した。女性の生産活動は,収入を伴う経済活動と無収入の家事労働とに大別される。前者には海浜地域を中心とした漁労活動,交易流通の仲介活動,ニッパ椰子屋根編みなどの直接生産活動が含まれる。後者には,網の補修などの生業補助や,食事の準備などの生活活動がある。この種のこれまで無視されてきた女性の労働の見えにくさに注目した結果,生業の含めた生活領域における女性の主体的役割を抽出できた。
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