研究課題/領域番号 |
03041040
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
向畑 恭男 名古屋大学, 理学部, 教授 (10028110)
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研究分担者 |
杉山 康雄 名古屋大学, 理学部, 助手 (70154507)
小西 徹也 新潟薬科大学, 薬学部, 助教授 (70057347)
加茂 直樹 北海道大学, 薬学部, 教授 (10001976)
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研究期間 (年度) |
1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1991年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 高度好塩菌 / レチナ-ルタンパク / 光駆動H^+ポンプ / バクテリオロドプシン / ア-キロドプシン / 光駆動Cl^-ポンプ / ハロロドプシン |
研究概要 |
1.調査の目的 高度好塩性古細菌Halobacterium halobium(北アメリカの塩湖産)の細胞膜には、レテナ-ルを発色団とする光駆動イオンポンプ、バクテリオロドプシン(bR:H^+ポンプ)とハロロドプシン(hR:Cl^-ポンプ)が、また、光センサ-、センソリ-ロドプシン(sR)とフォボロドプシン(pR)がある。Halobacterium sp.(1983年西オ-ストラリアの塩地で採取した)のア-キロドプシン(aR:H^+ポンプ)類のアミノ酸配列の相同性はbRと60%、また、hRと30%であった。さらに、Natronobacterium pharaonis(エジプトのアルカリ塩湖で採取)のファラオニスハロロドプシン(phR:Cl^-ポンプ)とhRの一次構造の相同性は60%であった。そして、レチナ-ルポケットを構成すると指摘されたアミノ酸残基のほとんどは、いずれのレチナ-ルタンパクでも保存されていた。また、イオン選択性には置換の起こったアミノ酸残基が関与することが推察された。 これらの事から、今後新たに見いだされる高度好塩菌には新しいレチナ-ルタンパクが見いだせる可能性が高く、それらの新しいレチナ-ルタンパクの一次構造も加えて比較すれば、イオンポンプの基本骨格が明らかとなり、ポンプの分子機構の解明や人工イオンポンプの分子設計の指針が得られると期待される。そこで、今まで調査されていない南アメリカ(アルゼンチン国)のアンデス山脈東側の塩地や塩湖において高度好塩菌を採集した。 2.試料の採集 平成4年1月アルゼンチン国北西部サルタ市(標高1200m、南緯24度、西経67度)の北西200kmにある塩地サリナスグランデス(塩地A)にて試料を採集した。本塩地は標高3300mのアンデス高地にある長径50km、短径15kmのほぼ楕円形の窪地で流出水系はない。降雨時には水が流れこむが蒸発が激しいので、乾期には祈出塩でおおわれている。塩分濃度の比較的低い水の流入地域(湿地で小潅木が茂っている)、塩が祈出露出している地域、そして、それらの中間の地域(表層は塩混じりの土で苔類が生育している)の採集可能な4地点53カ所から滞留水(pH7.3ー8.5、水温16ー20℃)、塩土、及び、塩の塊をサンプリングした。さらに、南部パタゴニア地方のバルデス半島(南緯42度、西経64度)中央部にある塩地サリナスグランデス(塩地B)とサリナスチカ(塩地C)にて試料を採集した。バルデス半島はほとんどが平地で寡雨、祈出した塩は塩地Bでは白色であったが、塩地Cでは赤く着色していた。塩地Bの12カ所、塩地Cの21カ所からサンプリングした。また、塩地Cには硫化水素臭のある黒色の土の地域があったので、ここからも黒い土をサンプリングした。 3.高度好塩菌の選別 塩地A、B、Cから採集してきた試料水、塩土、塩、合計86試料を高度好塩菌用の栄養培地5mlの入った試験管へ加え、40℃で振盪した。数日後、微生物の生育が認められた培地の一定量を高度好塩菌用寒天培地へ広げ、40℃で静置した。数日後、形成されたコロニ-の形状と色の違いを基に、寒天プレ-トに広げ第二次の選別を行った。安定したコロニ-を形成する株を液体栄養培地で増殖させた。現在、塩地AとCから白色、淡いオレンジ色、オレンジ色、赤色、赤紫色の株が、また、塩地Bから白色、淡いオレンジ色の株が得られている。また、塩地Cの黒色土を飽和食塩水中で嫌気培養したところ、メチルアミン添加によってメタンの発生が検出できた。新しい"好塩性メタン菌"を採取できたものと考えられる。 4.レチナ-ルタンパクを持つ高度好塩菌の単離 液体培地で安定に継代培養できる株からレチナ-ルタンパクを持つ株を選別するため、菌体を超音波で破砕して得た膜小胞懸濁液の光照射に伴うpH変化を測定した。現在までに光駆動のH^+ポンプとCl^-ポンプを共に持ち含有イソプレノイド色素型の異なる株を数種類単離した。 5.今後の研究の展開 (1)光エネルギ-変換能を持つ表現型(含有イソプレノイド色素、基質要求性、等)の異なる株それぞれについて、種の分類、光生理化学的性質、レチナ-ルタンパクの有無、H^+ポンプとCl^-ポンプの量を調べる。 (2)レチナ-ルタンパクを精製し、タンパク化学的性質を調べ、遺伝子DNAをクロ-ン化する。DNA塩基配列からアミノ酸配列を推定し、既知のレチナ-ルタンパクの配列と比較する。相同性比較から共通に保存されているアミノ酸残基を選定する。さらに、高度好塩菌とイオンポンプの進化的考察を深める。 (3)安定株すべてについて、sR、及び、pR類似の光情報変換レチナ-ルタンパクの有無を調べ、それらの遺伝子をクロ-ン化する。
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