研究課題/領域番号 |
03041045
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石田 英実 京都大学, 理学部, 教授 (60027480)
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研究分担者 |
ミィーブ リーキー ケニア国立博物館, 古生物学研究部門, 部長
中務 真人 大阪医科大学, 医学部, 助手 (00227828)
仲谷 英夫 香川大学, 教育学部, 助教授 (20180424)
牧野内 猛 名城大学, 理工学部, 助教授 (50131214)
沢田 順弘 島根大学, 理学部, 助教授 (80196328)
石田 志朗 山口大学, 理学部, 教授 (40025268)
MEAVE leakey Kenya National Museum Palaeontology
ミーブ リーキー ケニア国立博物館, 古生物学研究部門, 部長
国松 豊 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (80243111)
中野 良彦 大阪大学, 人間科学部, 助手 (50217808)
ミィーブ・リーキー ケニア国立博物館, 古生物学研究部門, 部長
バルク バジョベ ザイール国立科学研究センター, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
37,000千円 (直接経費: 37,000千円)
1993年度: 11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1992年度: 11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1991年度: 15,000千円 (直接経費: 15,000千円)
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キーワード | 人類の起源 / 現生類人猿の起源 / 中新世 / 古環境 / 古生物学 / 地質学 / サンブル=ホミノイド / ケニアピテク / ヒト科 / 地質・化石調査 / ヒト上科 / アフリカ / 古人類学 / 人類の超源 / 中新世ホミノイド / ケニアピテクス / サンプル=ホミノイド / 北ケニア / サンプル=ヒルズ / ナチョラ地域 / 化石調査 |
研究概要 |
本調査では立案時より大きな目標として2本の柱を中心に計画を立てた。一つは従来よりのアフリカ後期中新統に焦点を合わせたヒト科出現とその環境的背景の研究であり、他の一つは現生の大型類人猿、とくにアフリカに生息するチンパンジーとゴリラの祖先の発見を目指したものであった。その理由はミトコンドリアDNAの分析など分子生物学的研究がヒトとチンパンジーの共通の祖先が約500万年前に分かれ、以後別々の進化の道筋を辿ったたとする示唆をも踏まえたものであった。したがって、調査地域としては初期人類については北ケニアのサンブル=ヒルズとナチョラ地域を、現生のアフリカ類人猿の祖先についてはチンパンジーの生息域では最東端となる東北ザイールを選んだ。 平成3年度の調査は7月中旬を開始時期として準備を進めていたが、春の終わり頃からザイールの政情が不安定となり晩秋に至ってザイールへの渡航自粛勧告となったことから、ザイール調査は中止を余儀なくされる事態となった。政情好転を期待してアフリカへの出発を遅らせていたが、上のような事情から当分はケニアでの初期人類調査に専念することとして11月中旬に日本を発ちケニアに向った。 地質調査ではケニアリフト北部のリフト東部フランクからリフトフロア-にかけて調査を完了し、地質図を完成させた(多色刷の地質図を今年度に作成した)。層序では下位からNachola F.(19-15Ma),Aka Aiteputh F.(15-10Ma),Namurungule F.(10-7Ma),Nayangaten-Kongia F.(7-5Ma),Tirr-Tirr F.(4Ma)および第四紀火山岩類を区分、確認した。構造発達史的には19Maから10Maにかけては火山活動は活発があり、15Maには大量のトラカイト、他は基本的にアルカリ質のバイモーダルな活動であった。8-9Maは火山活動が微弱か又は休止の時期であるが、この累層の前後とのギャップが著しく大規模な構造運動が起きたことを示している。7Ma以降は再び火山活動が活発化している。ケニアピテクスとサンブル=ホミノイドの年代は地質図と地質柱状図の完成から前者が15-14Ma,後者は9-8Maとされた。 化石調査ではサンブル=ヒルズ、ナチョラの両地域において広域にわたる精細な表面採集と発掘を行った。Namurungule F.からの大量のウシ科やウマ科は、この累層が堆積した時代にはヒッパリオンがすでにアフリカへの侵入を果たしており、開けた疎林からサバンナへの大きな環境変容を示している。この動物相は北アフリカ、南西および中央ヨーロッパのそれと類似し、サハラ砂漠以南における後期中新世ではもっとも豊かなものであり、続く現代へのさきがけ的存在である。サンブル=ホミノイドについては新しい化石標本の追加という幸運には恵まれなかったが、ナイロビのケニア国立博物館および国内での分析が進み、その結果、顔面部が古い形質を残すものの?上顎大臼歯歯冠の形態や摩耗様式からは比較的堅い食物をとり、そしゃく様式もすりつぶし型であったと考察されている。ロコモーション様式については、体が大型なこと、サバンナ的な生息環と食性から地上性であり、ナックル歩行の可能性が高く、二足歩行の存在も否定できない状況にある。ホミニドとしては時代的にやや早いが、多くの可能性をもつことから追加資料の発見が是非とも必要とされる。 ナチョラ地域の中期中新世の動物相とホミノイドについてはプレ・ヒッパリオンの時代であり、環境も森林が優勢であったと考えられる。ケニアピテクスの四肢体幹骨からも樹上性で垂直登はん型のロコモーション様式が推定された。しかし歯の形態からはすでに比較的堅い食物に適応していることが明らかであり、そしゃく様式もすりつぶし型に近いものであったとされる。このように樹上生活者のケニアピテクスに後代のホミニドに対して歯牙形態に前適応が見られるのは極めて興味深い。ケニアピテクスについては非常に多くの事が分かったが今後の調査においては頭骨の発見が強く望まれるところである。なお、ナチョラ地域からのケニアピテクス、ニアンザピテクスの両者はともに新種であり、今後さらに研究を深める必要があり、ことにニアンザピテクスの運動様式の復元は興味深い。
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