研究概要 |
生物種に富む熱帯域は地球上で最も生命活動の活発な地域で,生息する生物間で多様な相互作用が存在しているものと考えられる。本研究者らはこれまで,アフリカ熱帯多雨林産植物を取り上げ,ヒトをも含む生物との相互関係を克明に調査し,種々の作用に係わる化学成分(生理活性成分)の研究を行ってきた。本年度はタンザニアサヴァンナ林に調査域を広げた。なお,多雨林での調査,ならびに生理活性成分の研究は継続して行った。 1.タンザニア・マハレ山国立公園での調査:京大西田利貞らは,最近本域のチンパンジーが植物を薬用的に採食している可能性を見い出している。そこで本域では,チンパンジーの採食行動より薬用的利用と考えられる植物を調査・採取(14種)した。さらに民間伝承的利用植物17種(主として薬用)を入手した。2.カメルーン熱帯多雨林・ンコロヨン地区での調査:本域では,広く動物採食行動と民間利用を合わせ調査し,有用植物10種を入手した。さらに前回の調査研究から,化学的研究対象と指摘できた植物種の量的確保を行った。特に,シクンシ科Combretum bracteatumは強力な除草活性成分を含む種として現在化学分析中の植物である。3.生理活性物質の採索研究:チンパンジー薬用植物キク科Vernonia amygdalinaより抗住血吸虫活性を示す新規ステロイド配糖体類を明らかにした。これらは,チンパンジーの本植物採食意義を寄生虫症の観点より考察できる興味ある化合物であった.また,多雨林産鎮痛性オクナ科植物Lophira alataより抗発癌プロモーター数値を明らかにした。4.今後の展開:本年度採取した植物について,種々の生理活性試験を試みる。さらに,活性の認められた植物より活性物質の精製単離・構造決定を行う。
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