研究課題/領域番号 |
03041050
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻 成史 大阪大学, 文学部, 教授 (90127259)
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研究分担者 |
岡本 真佐子 大阪大学, 人間科学部, 助手 (40252564)
浅野 和生 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (80167890)
益田 朋幸 早稲田大学, 文学部, 助手 (70257236)
大橋 哲郎 大阪大学, 文学部, 技官
福永 伸哉 大阪大学, 文学部, 助手 (50189958)
中谷 功治 大阪大学, 文学部, 助手 (30217749)
勝又 俊雄 女子美術大学, 芸術学部, 助教授 (70224475)
合阪 学 (合阪 學) 大阪大学, 文学部, 教授 (50027976)
北條 芳隆 徳島大学, 医学部, 助手
長塚 安司 東海大学, 教養学部, 教授 (30015250)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
21,000千円 (直接経費: 21,000千円)
1993年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1992年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1991年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | リキア / フェティエ / ビザンティン都市 / ビザンティン建築 / ビザンティン絵画 / アプス装飾 / ネクロポリス / トルコ / 地中海岸 / ビザンチン文化 / 建築 / 都市計画 / キリスト教文化 / 交易 / 巡礼 / 海上交易 / 聖地巡礼 / ビザンチン建築 / ビザンチン美術 / 中世都市 / 東西交流 |
研究概要 |
平成4年に提出した「平成5年度の調査研究実施計画」に基づいてその実績の概要を記す。1.これまでのリキア沿岸地域の調査を通じ、初期ビザンティン都市と多数の建築の遺構、陶片、フレスコ、モザイク等を発見し、既知のものと併せて組織的測量、記述を行ってきた。後述のように、本年度の調査によって、新発見の遺構の数はさらに増している。他方、これらの遺構の性格を確定し、その歴史的位置を確かめるには、他地域の関連する遺構との比較研究が不可欠である。そのため今年度は、リキア地方における調査に先立ち、あるいはこれと平行して、イタリア、ギリシャで調査、写真撮影を行なった。 (1)浅野、益田、大橋はローマ市の古代遺跡フォロ・ロマ-ノに立つ5-7世紀の教会サンタ・マリア・アンティクワの壁画群を調査、撮影した。遺例の少ないこの時代の代表作としてきわめて重要なモニュメントであるにもかかわらず、これに関する写真資料はきわめて乏しく、しかも近年はその立ち入りすら厳しく制限されている。その意味でイタリア当局の許可を得、短時日ではあるが貴重な資料を得ることができたのはまことに幸であった。 (2)合阪は単身ローマ以南、シシリ-等における古代の港湾都市を視察した。 (3)勝又はイオニア沿岸のロドス、コス、キオス等の島にある初期ビザンティン遺跡と、その出土品を調査し、多くの知見を得た。またアテネ、テサロニキ等において、関連する領域の研究者と討論を行い、多数の文献資料を渉猟した。 2.現地、とくに当該地域の中心をなすゲミレル島に関しては航空写真の必要が強く感じられる。今年も現地で、フェティエ市博物館を通じ、色々てだてを探したが、再び実現を見送ることとなった。それに代えて、大橋は、エリュデニズ-ゲミレル湾岸の東にある標高2,000mのババ山頂まで登り、湾岸全体を捉えての撮影に成功した。 3.本年の現地における調査の主要部分は、ゲミレル東北岸に展開する都市の構造、機能の解明にあてられた。これに関連し、まず島全体の都市学的構成が島の頂点を中心とする古代から続く墓地(ネクロポリス)と島の東部分を占めるビザンティン時代のネクロポリス、それに島北面と沿岸部分を占める住居区域に明確に分かたれていることを確認したのは重要であった。この前提に立って観察するなら、第3会堂はおそらく古ネクロポリスの中心におかれたものであり、これに対し第2、4会堂はいずれも住居部分とネクロポリスの境界上にあると考えられる。さらにこの二会堂に関しては、住居地域を抜けて会堂に入るそのアクセッス部分に、おそらく象徴的意味を持つと思われる複数のヴォ-ルト構造の建築を配している。今回の調査ではこれら特定の建築コンプレックスに対し集中的に測量を行なった。また市街を構成する格子状に配された通路が、とくに港湾施設との関連でどのように辿れるかを構造の残されている範囲で精査し、合わせて沿岸部の諸構造を詳しく調査した。 4.すでにこれまでに調査に着手した会堂に関し、測量を拡大して行なった。とくに第1教会は、今日までその全体像が不明確であったが、今回は新たに洗礼槽の発見を加えて、これまでよりは統一的平面を獲得することができた。ゲミレル島対岸の新発見の教会についての測量も予定通り完了した。 5.モザイクに関する資料整理、クリアリング等は、人員の張り付けができなかったため、今後の課題としてこれを持ち越した。 6.観光公害対策としては、前年度に引き続き、重要な遺構のフェンシング、観光客に対する注意と呼びかけを記した立て札の設置等を行った。水質保全を含めての組織的な環境保全計画については、今後ム-ラ県立大学、ボスフォラス大学(イスタンブル)との提携計画に平行してこれを考えることとし、その旨をム-ラ県知事と話し合った。 以上前年度に提出した計画に沿った成果以外に、今年度はエリュデニズ-ゲミレル湾岸の一般調査から、従来あまり知られておらず、全く調査されていなかったいくつかの教会堂の遺構を発見した。その中でも、エリュデニズ村海水浴場近くで発見された教会堂南アプス装飾は、大部分が欠落しているものの、なお図像全体の輪郭がほぼ復元可能であり、フレスコの一部がよく残存している。これまでこの地域で発見されたもののうちでも最も芸術的質が高く、聖像論争以前のビザンティン絵画史研究に重要な資料となるであろう。
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