米国におけるジャポニカ米の生産コスト及び潜在的生産能力に関する研究

• 研究課題/領域番号: 03041054
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 鳥取大学
• 研究代表者: 伊東 正一 鳥取大学, 農学部, 助教授 (30222425)
• 研究分担者: LIVEZEY Jane 農務省, 経済調査局(米国), 稲作情報担当官 ; RUTGER Neil カリフォルニア大学, デービス校・農学部, 教授 ; MOORE Charle カリフォルニア大学, 協同組合研究所, 専門官 ; GERLOW Arthu テキサスA&M大学, 農学部, 教授 ; WAILES Eric アーカンソー大学, 農学部, 助教授 ; 笠原 浩三 鳥取大学, 農学部, 教授 (60135837) ; 藤井 嘉儀 鳥取大学, 農学部, 教授 (20032097) ; 樋口 英夫 鳥取大学, 農学部, 教授 (60032083) ; 本名 俊正 鳥取大学, 農学部, 助教授 (90093624) ; 稲本 志良 京都大学, 農学部, 教授 (80026468)
• 研究期間 (年度): 1991
• 研究課題ステータス: 完了 (1991年度)
• 配分額: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円); 1991年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
• キーワード: アメリカ合衆国 / ジャポニカ米 / 潜在的生産能力 / 生産コスト

研究概要

本研究は当初、3年間の計画で立案したものだが、今年度は単年度課題として取り組むことになった。今年度の調査では、特に(1)稲作全体における水資源の問題が明らかになったこと、(2)各州の研究機関における品種に関するデ-タ-は不十分な点が多いことが判明したこと、(3)ア-カンソ-州のI農家と共同研究が行える運びとなったことーーなどが、大きな成果であった。これらの調査結果は今後の研究を継続する上で貴重な資料となろう。
水不足問題はカリフォルニアにおいて1992年で6年目の干ばつを迎えたことにより、深刻な局面に至っている。特に、ジャボニカ米の主産地であるこの州において、水不足(つまり、水利コストの上昇)は作付け面積拡大に対し、大きな歯止めとなっている。1991年は州政府が1エ-カ-・フィ-ト当たり125ドルで農家から水を買い取るという政策に出た。この価格は農家にとっては非常に魅力的であり、カリフォルニア大のR.Howitt教授の試算によると、生産をやめて水を売った方が農家にとっては利益になるという状態であった。今年(1992年)は水の価格は降雨の状況にもよるが、昨年よりは安い価格となる見通しである。結果的には農家は水の価格、農産物の価格、そして、諸々の政策を総合的に考慮して、作付け面積を決定することになる。しかし、その中でも、水価格の影響は大で、水価格が高ければ高いほど、作付け面積は縮小する傾向になる。
この点においては南部(特にア-カンソ-州)の潜在的生産拡大能力は大きいと見ることができる。1991年の作付け面積においても、加州が水不足で減産となると、いちはやく中粒種の面積を拡大した。水にゆとりがあるだけに、作付け面積の拡大はコメの販売価格次第である。今後の調査は南部州に重点が置かれるべきである。南部州におけるジャポニカ米の生育状況についてはまだデ-タ-が不足しているが、今後、ア-カンソ-州のI農家との共同研究により、極めて貴重なデ-タ-が得られるものと思われる。
米国の稲作においては各州にある稲作研究所及び州立大学が研究の主導権を握っている。これらの研究機関は新しい品種の開発をするとともに、お互いに競争もしている。さらには各州の研究所には「縄張り意識」がある。かつて、ルイジアナ州で稲作研究に携わり、現在、カリフォルニアの稲作試験場の場長をしているマ-リン・ブランドン(Marlin Brandon)博士はわが調査団の質問に対し、始めて各州の試験場の縄張り意識が存在することを認め、それが生産性の向上によっていかに深刻な障壁となっているかを強調した。
これらのことから、各州の試験場の試験結果(又は説明)をそのまま受け入れすることは危険であると思われる。このことを裏付けるかのように、ア-カンソ-のI農家は、南部では生産不能と見なされていたカリフォルニア米の品種「M401」を作付けし、ア-カンソ-州の他品種に勝る収量を上げていることがわかった。ところで、このI農家は日本のコメに近い品種も1990年から試験的に生産を始めている。異常気象等で、過去2年間は不作であったが、1992年も作付けの予定で、わが研究グル-プに対し、全デ-タ-を提供するよう1991年秋に約束が交わされた。一方、カリフォルニアの稲作試験場ではコシヒカリ、アキタコマチの試験的試作が行われたが、カリフォルニアの気候においては現地で開発されたジャポニカ米の品種に比べ、約2割の減産になるとみている。
今回の研究は1年間のものであり、広範囲の調査・分析は困難であった。しかしながら、来年度から新たに2年間計画で同じ趣旨(調査対象国は拡大)の文部省科学研究費が配分されることとなった。向こう2年間においては、米国の試験場及び農家において生産され始めたジャポニカ品種の生産性について追跡調査を行い、さらに天候不順と環境保護の両サイドから窮地に追い込まれている稲作農家の水問題についての調査が重要であろう。一方、アジア、オセアニア、そして欧州におけるジャポニカ米についても調査の域を拡大し、グロ-バルな視点で潜在的な生産能力について把握したい。

研究成果

• [文献書誌] 伊東 正一ほか: "外国産ジャポニカ米に対する市民の評価"
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 樋口 英夫: "コメ生産に関する機械作業コスト及び生産システムに関する調査"
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Ito, Shoichi et al.: "Evaluation of Foreign-Produced Japonica Rice"
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Higuchi, Hideo: "Production Systems and Costs of Machine Operations for Rice"
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より