研究分担者 |
ZAPATA MARCO ウベラーバ大学(ブラジル), 医学部, 助手
MAURO JADAL ウベラーバ大学(ブラジル), 医学部, 助手
RANIREZ LUIS ウベラーバ大学(ブラジル), 医学部, 教授
PRATA ALUIZI ウベラーバ大学(ブラジル), 医学部, 教授
畑 英一 千葉大学, 医学部, 助手 (00110304)
小林 仁 千葉大学, 医学部, 助手 (80009654)
岩永 襄 (岩永 裏) 広島大学, 医学部, 助教授 (10034000)
頓宮 廉正 岡山大学, 医療短期大学部, 教授 (80032895)
横川 宗雄 千葉大学, 医学部, 名誉教授 (60009066)
ZAPATA Marco ウベラーバ大学, 医学部(ブラジル), 助手
MAURO Jadal ウベラーバ大学, 医学部(ブラジル), 助手
RAMIREZ Luiz ウベラーバ大学, 医学部(ブラジル), 教授
PRATA Aluizi ウベラーバ大学, 医学部(ブラジル), 教授
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研究概要 |
1850年に世界ではじめて報告された肺吸虫が見いだされたブラジルのロンドニア州における調査を行った結果,第一中間宿主の貝では肺吸虫の中間宿主となり得るAroapyrgusなどの小さな貝は見いだされず,MalisaやPilaが採集されたのみであった。第二中間宿主のカニはローラン・ド・ムーラで15匹,パオ・デ・オレオで15匹が採集されて検査したが,肺吸虫のメタセルカリアは検出されず,他種のメタセルカリアがそれぞれの地区から一匹ずつ見いだされたのみであった。ペドラネグラで捕獲したオポッサムやRattusおよびインデイアンの居住区であるパウ・デ・オレオで捕獲したAgoutiなど野獣の調査でも肺吸虫成虫は検出されず,また住民検診でも検痰や検便で虫卵陽性者が1名も見いだされなかった。メキシコ肺吸虫抗原を用いての皮内反応の結果は,全体で358名中陽性が4名(1.1%),疑陽性が4名(1.1%)であって,一番陽性率の高かったローラン・ド・ムーラでも122名中陽性3名(2.5%),疑陽性4名(3.3%)であった。4年程前に研究分担者のプラタ教授らが同地区で行った折はその陽性率が10ないし25%であったので今回その陽性者を呼び出した再検査を実施したところ,1名が疑陽性を示した以外はすベてが陰性であった。この原因は皮内反応の接種量が異なっていたためで,肺吸虫症の検診では通常0.02ないし0.05mlを接種するのに対し,プラタ教授らは0.1mlと約倍量の抗原を接種し乍ら膨疹の判定を同じにしていたためである。皮内反応が陽性あるいは疑陽性を呈した8名と先の検診で皮内反応が陽性を示し,臨床的に肺吸虫の感染が疑われていた11名を加えた19名について採血を行い,その血清について免疫電気泳動法やELISA,補体結合反応などの血清反応を実施したが,全例が陰性であった。この4例は何れも日本からの移住者である。なおブラジルの国境から約800Kmにあるペルーのアマゾン地区のフアンコおよびロレト州から人体感染例や野生動物から肺吸虫が証明されいてることからブラジルのアマゾン地区にも肺吸虫が存在するものと推察されるが今回の調査からは肺吸虫の証明はなされなかった。しかし近隣諸国から多くの肺吸虫が見いだされているので,広いアマゾン地区での調査は腰を落ち着けて綿密に行うことが必要であると同時に,今回調査を行ったグアポーレ河の対岸に位置するボリビア側の支流の調査を実施して最終判断をしなければならない。 今回の調査で行った住民検診の検便は全部で282例である。現地で行った直接厚層塗抹法と検査材料を日本に持ち帰って実施したフォルマリン・エーテル法による検査の結果,肺吸虫卵は検出されなかったが,206名(73.0%)で何らかの蠕虫卵か原虫の嚢子が証明された。蠕虫卵陽性は162例(57.4%)で,その内訳は蛔虫83例(29.4%),鉤虫86例(30.5%),鞭虫51例(18.1%),蟯虫1例(0.4%),糞線虫18例(6.4%),小形条虫14例(5.0%),縮小条虫16例(5.7%)であり,原虫嚢子陽性は141例(50.0%)で,その内訳は赤痢アメーバ47例(16.7%),大腸アメーバ89例(31.6%),小形アメーバ1例(0.4%),ヨードアメーバ38例(13.5%),ランブル鞭毛虫23例(8.2%)であった。なお現地で行った厚層塗抹法で蠕虫卵が陽性であった症例に対しては日本から持参した駆虫剤を投与した。肺吸虫症患者は見いだされなかったが,アマゾンのグアポーレ河流域のロンドニア州における寄生虫症の疫学調査は今回の我々の調査団が始めてであり,多くの蠕虫および原虫の感染者が存在していると云う成績が得られた意義は大きく,ロンドニア州衛生局およびウベラーバで行った臨床医を含めたセミナーの席でブラジル側の研究者や臨床家からも高く評価された。特にグアポーレ河の本流から約40Km離れた支流に居住するインデイアンの部落で感染率が100%であったことは隔絶された地域だけに,同地区における今後の衛生対策に大きな示唆を与えるものである。今後も機会があればアマゾン地区の寄生虫に対する研究と対策をブラジルの研究者と共同で継続したいと考えている。
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