研究課題/領域番号 |
03041064
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
鈴木 英治 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (10128431)
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研究分担者 |
甲山 隆司 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (60178233)
ジュワンサ M.R. 地球工学研究教育センター, 研究員
梶 幹男 東京大学, 農学部, 助教授 (00152645)
JUWANSAH Muh.Rahman Research and Development Center for Geotechnology, LIPI Researcher
スダルソノ.リスワン ボゴール植物標本館, 研究員
堀田 満 鹿児島大学, 理学部, 教授 (10026817)
スーレ アーマッド バンドン地質工学研究所, 研究員
ヘハヌッサ ピーター E バンドン地質工学研究所, 研究部長
ハ゜ルトミハルジョ ツキリ ボゴール植物標本館, 研究員
リスワン スダルリノ ボゴール植物標本館, 館長
小池 文人 島根大学, 理学部, 助手 (20202054)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
18,000千円 (直接経費: 18,000千円)
1993年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1992年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1991年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
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キーワード | 熱帯林 / 植物生態 / フタバガキ科 / 森林動態 / インドネシア / ボルネオ / 生物多様性 / 森林利用 / 森林更新 / 焼畑 / 植生遷移 / 有用植物 / 環境保全 / 天然林 / 植林 |
研究概要 |
1.西カリマンタンの植生 (1)概要:西カリマンタンのニウット山自然保護区とその周辺で、昨年までに設定した19個の調査区に5調査区を加え、合計9.1haの植生を調べた。その結果、1haの調査区で幹周囲15cm以上の樹木が300〜370種、全体では1300種以上の樹木が分布し、きわめて多様性が高い地域であることがわかってきた。熱帯アジアの優占種であるフタバガキ科だけでも約60種が見られ、場所によってさまざまな植生があった。それは、沢ぞいと尾根ぞいに多い種というように環境条件の違いで説明できるものと、類似した立地に設定した調査区でもかなり異なった種組成が出現しまだ説明のできない例もあり、今後の研究が必要である。 (2)土壌と植生の関係:フタバガキ科天然林、焼畑などで土壌の分析を行った。川付近の砂質土壌に多い植生、丘陵に多い植生など、植生の全体的な変化は土壌の変化とおよそ対応してた。しかし土壌の多様性は植生の多様性よりもはるかに低いので、その複雑な変化を土壌だけで説明することはできない。 (3)山地林:今年度重点的に調べたのはニウット山西部の山地林である。そこには数百年以前から存在する集落があるが、最短の集落までは1日、自動車道路がある町までは2〜3日間歩かなければならない。伝統的な土地利用をしている地域と考えられるが、最近になって月に一度来る医療チームのおかげか人口が増加し、焼畑の面積が増えつつあった。その集落周辺で天然林に1haの調査区と焼畑跡地で小さい区を3つ設定し植生の変化を調べた。 (4)熱帯の他地域との比較:赤道付近の低地帯で以前調査した西スマトラ、東ボルネオのフローラと本調査地域のものを比較すると、共通種は互いに数%しかなく、類似の気候条件にある熱帯多雨林でも、植生は大きく異なることがわかった。これは熱帯地域の多様性が高いことの反映であり、少数の箇所の調査だけでは全体を理解することが難しいことを示している。 2.個体群動態 (1)結実と実生の定着:フタバガキ科天然林内に設定した2つの1haの調査区周辺で、1993年には多くの樹木が結実した。その結実量とその後の実生の定着過程を、代表的な数樹種について調べた。たとえばこの地域の優占種になることが多いフタバガキ科のDryobalanops beccariiでは、74個/m^2の果実が落下し、そのうちの42%が健全で、1.8本/m^2の実生が定着した。これらの実生にはラベルをつけたので、来年度以降も追跡調査を行う。後述する森林動態の研究も継続測定が必要があり、調査基地となる小屋を天然林のそばに作った。 (2)Scaphium macropodumの生態:アオギリ科の高木である本種は、フタバガキ科のように風散布果実をつくり数十mまで散布していた。散布後数日でほとんどの種子が発芽するが、母樹の直下の死亡率は高かった。発芽後樹高約14mに達するまでは、主幹だけで枝を出さない。その代わりに大きい個体の葉ほど大きく、また掌状に深く切れ込むようになる。暗い林内では幹の上部だけにそのような長い葉柄をもった葉を傘型につけて、林冠のギャップができるのを待っている。ギャップができると樹高成長が盛んになり、また枝を出す。分岐した成熟個体では、切れ込まない小さな葉をつけるようになる。 3.森林の動態 以前に設定した7調査区について、樹木の成長量測定を行った。伐採会社が大径木を抜き伐りしただけの林分では、多数残存するフタバガキ科幼木の成長が旺盛であった。従って、放置しておけば以前と似たような森林が回復すると思われる。ただし、多くの択伐跡地は焼畑に変えられていた。焼畑跡地では代表的な先駆種であるMacarangaが多かったが、成長の速い個体と、競争に負けてほとんど成長していない個体にわかれていた。フタバガキ科は種子の寿命が短く埋土種子として残らないので、幼木が焼かれた場所からは消滅した。フタバガキ科の中で果実が有用なので植林されたテンカワンの約百年生の林分では、多くの個体がまだ活発に成長していた。
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