研究概要 |
今回の調査は,平成元年度文部省科学研究費(国際学術研究)補助金「カナダおよびアメリカ合衆国における実験動物および動物実験に関する現状(研究代表者:前島一淑,課題番号:01041117)」に続くもので,前回は日程の都合で動物実験委員会を傍聴して動物実験計画の審査に直接々すること,および,動物実験委員会のメンバ-(とくに地域社会代表者)の意見を聞くことができなかったので,とくにこれらの点に重点を置いて実施した。なお,計画の段階では,カナダとアメリカ合衆国の相違はそれほど大きくないので,今回はアメリカ合衆国のみを調査対象国としていたが,調査実施の直前にカナダ側より動物実験委員会の開催をわれわれの日程に合わせて呉れるという連絡があったため,研究課題(表題)には記述してないカナダをも調査対象国とした。 調査のため訪問した研究機関(大学,組織)と研究者は以下の通りである。〔カナダ〕トロント大学動物委員会,トロント大学医学部動物委員会,マウントサイナイ病院動物委員会,Jeanne IkedaーDouglas博士,George Wallace博士,S.E.Pearson牧師,Jane Vinet女史,その他多数のカナダ人研究者,約30名の日本人留学生。〔アメリカ合衆国〕ノ-スカロライナ州立大学獣医学部,デュ-ク大学霊長類研究所,ジョンズホプキンス大学代替研究センタ-,米国立環境保健研究所,米国実験動物資源協会,米国実験動物管理認定協会,ノ-スカロライナ州生物医学財団,米国生物医学財団,Philip B.Carter博士,Michael Levy博士,Charles McPherson博士,Patricia Feeser博士,John Sylvester,Jr氏,Karen S.Hoffman女史,William S.Stoke博士,Albert E.New博士,Joan S.Poling博士,Alan M.Goldbern博士,Frank P.Ward,Jr弁護士,その他数多くのアメリカ人研究者,一般市民。 今回の調査結果は,前回の調査で得られた結論,つまり,わが国の国情を考慮しつつ動物実験オ-ルタナティヴに関して国際水準に近付くためには,北米2国のそれに近い制度の整備がわが国に相応しい,をますます強めるものであった。北米2国の制度とは,研究機関の責任において動物の管理と利用に関する委員会(動物委員会)を設置し,この動物委員会は,動物実験オ-ルタナティヴの観点から自主的に(1)実験動物を用いる実験計画を審査し,(2)実験動物施設を管理監督する方式である。なお,実験動物施設の査察については,これら2国においては法的に定められているが,実際は関係者による自主規制の色彩が強い。このことを可能にしている重要な因子の1つは,研究機関による公正な自主規制(それは動物委員会のメンバ-に地域社会代表者を加える等の配慮を含む)にある。 今回の調査記録は,実験動物関係誌「アニテックス」第4巻第3号(1992年5月号)に詳しく報告することにする。そして,その別刷りを関係者に広く配布する予定である。
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