研究課題/領域番号 |
03041074
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 明治大学 (1992-1993) 聖心女子大学 (1991) |
研究代表者 |
日向 一雅 明治大学, 文学部, 教授 (90079426)
|
研究分担者 |
金 鍾徳 韓国外国語大学校, 東洋語大学, 助教授
朴 銓烈 中央大学校, 文理科大学, 助教授
崔 吉城 中部大学, 国際関係学部, 教授 (80236794)
勝原 菜温子 恵泉女学園大学, 人文学部, 助教授 (50204441)
小林 正明 青山学院女子短期大学, 助教授 (00186769)
林 雅彦 明治大学, 法学部, 教授 (30139448)
CHOE Kilsun Chubu University Professor
PAK Jongyol Chungang University associated professor
KIM Jongdok Hankuk University of Foreign Studies associated professor
|
研究期間 (年度) |
1991 – 1993
|
研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
|
配分額 *注記 |
14,000千円 (直接経費: 14,000千円)
1993年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1992年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1991年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
|
キーワード | 日韓古典文学 / 日韓比較研究 / 仏教文化 / 儒教文化 / シャーマニズム / 道教 / ムーダン / 歌謡 / シャ-マニズム / 道教文化 / 巫堂(ム-ダン) |
研究概要 |
平成5年度の調査範囲は、韓国南部の全羅道・済州島であるが、一部前年度の地域を再調査した。まず儒教関係では前年度の南原郷校に続き、全州郷校、晋州郷校の調査を行なった。現在管理運営している人たちから郷校の運営や活動の様子、儒聖の祭祀、郷校の構造などについて詳しく聞くことができ、郷校の地域社会での活動など明確にできた点は数多い。また夏休み中であったので小学生たちの千字文の学習を見たが、その朗唱のリズムは独特である。これまでの書院調査、宗廟、祀堂の調査と併せて韓国の儒教的文化の根幹を理解する上で貴重な成果があった(日向、小林)。 仏教関係では仏教説話、説話画について、林が前年度に引き続き忠清北道の法住寺での調査を行なった。その「龍華浄土の図(全13図)」(仮称)は近年の石刻図であるが、その第12図「娑婆苦悩相」の図柄は、いわゆる「五趣生死輪」であり、早く『高麗大蔵経』中の「大方広仏華厳経巻第三十七変相」と題する図と一致する。これらは元暁、義湘に代表される朝鮮仏教界の華厳思想の展開を考える上で貴重な資料であり、また庶民を対象とした仏教説話画の果たしてきた役割を考える上でも貴重である。この他釜山市の梵魚寺捌相殿内の「釈加八相図」にはすべての場面に解説文が付けられていて、かつて絵解きがなされたことが推定されるものである。全羅南道の松広寺では地蔵殿の外壁に「仏説大報父母恩重経図(全10図)」が描かれ、大雄殿外壁には「六波羅密図(全6図)」が描かれるが、これらは韓国仏教の性格や多様性を考える上で貴重な資料である。特に「六波羅密図」は初めて見た図で興味深い。済州島の寺院については従来韓国内で刊行された書籍でもあまり触れられていないようであるが、今回山房窟寺以下、11箇寺を調査した。その中で特に月井寺の大雄殿には慧能譚や元暁、義湘の説話がそれぞれ絵画化されていたのが興味深かった。本研究費に基づく調査と研究成果は別紙のとおり公表したが、従来韓国では手薄であった仏教説話画の本格的な研究にいささか寄与しえたのではないかと自負している(林)。 また日向は全羅南道の実相寺、仙巌寺、大興寺、華厳寺、また慶尚南道の仏国寺、通度寺、表忠寺などにおいて浄土教的寺院構造の特徴を調査した。これは無量寿経や観無量寿仏経疏などの浄土教経典に描かれる浄土と現世との関係構造が寺院建築にどのように構造化されているかという調査である。日本における浄土庭園や浄土宗、浄土真宗の寺院建築の構造と比較し、浄土往生の比喩説である「二河白道」説の流布状況を推定するためである。日本においても韓国においても「二河白道」説に淵源する独自な浄土教的文化の成立と展開が見られる点について、論文として発表した(日向)。 文学関係では小林が、唐津の茶山草堂、王仁博士廟、ポギル島の尹善道の流謫地、光州市の崔致遠廟である芝山影堂、配流の宰相鄭徹の故地である潭陽の松江亭、息影亭など、また済州島の表善民俗村ではこれまた流罪となった光海君の囲離御所を訪ねた。前年度までの各地の文学、伝説関連の史跡や遺跡の調査、扶余、新羅の旧都調査と併せて、朝鮮古典文学の風土を実地に観察できた意味は大きい。その文学の独特の政治性、隠逸の文人の系譜、貴種流離譚など、日本の古典文学との類縁性と異質性を考える手掛かりができたと思う。(小林・勝原) 崔は日韓文化における宗教の役割を比較研究することに重点を置いた調査を行なってきた。シャーマニズムの調査としては全羅南道のタンゴルの実状について引き続きインタビュー調査を行なう一方、今日の韓国におけるキリスト教の伝道、布教活動について各地の実態調査をした。都市化によって伝統宗教であるシャーマニズムは表面的には弱化していくが、実は山奥に聖所を求めて半ば隠れながら、存続していることを本調査を通じて各地で確認した。またキリスト教が巫俗を迷信として否定しながら、布教活動の中に巫俗を取り入れていることも分かってきた。これらについては既に雑誌等に発表してきたし、また発表予定である(崔)。
|