研究課題/領域番号 |
03041075
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
吉田 禎吾 桜美林大学, 大学院・国際学研究科, 教授 (60037025)
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研究分担者 |
小田 昌教 一ツ橋大学, 社会学部・大学院(研究協力者), 博士課程
慶田 勝彦 九州共立大学, 経済学部, 助教授 (10195620)
浜本 満 一ツ橋大学, 社会学部, 助教授 (40156419)
上田 冨士子 九州国際大学, 国際商学部, 教授 (70213361)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
24,000千円 (直接経費: 24,000千円)
1993年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
1992年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1991年度: 9,000千円 (直接経費: 9,000千円)
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キーワード | 東アフリカ / ミジケンダ / イスラム / 妖術 / 憑依霊 / 祖霊 / 秩序 / 病気 / 医療 / 災因論 / 憑依 / イスラム化 / 治療儀礼 / 病いの経験 / 憑依霊信仰 / 妖術信仰 / 性の秩序 / 死 / 呪医 |
研究概要 |
本研究は、「病気」の経験が文化的に構築されたものであるとの認識に基づき、ケニアのコースト・プロビンスのバントゥ系民族集団ミジケンダにおいて、病気の経験がさまざまな社会・文化的慣行といかに関連しているかを明らかにしようとするものである。 本研究チームは、ミジケンダを構成する9の下位集団のうち人口規模の大きいディゴ、ドゥルマ、ギリアマの3つのグループにおいて3年度にわたって計14ヶ月を越える集中的なフィールド・リサーチを行った。この3集団は文化的にきわめて近接しており、共通の起源伝承をもち、それぞれの言語も相互に理解可能である。しかしこの3集団は、その社会制度、生態学的、宗教的環境において大きな対照を見せている。ディゴは海岸沿いの換金作物に恵まれた肥沃な土地に居住し、出自は最近までもっぱら母系で、宗教的にはほぼ完全にイスラム化されている。ドゥルマはその後背地の乾燥したブッシュ地帯に居住し、トウモロコシ栽培とわずかなヤギやウシの牧畜に依存しているが、頻繁な飢饉のため若年者の都市での賃労働が重要な経済的活動になっている。出自は父系、母系の両集団に基づく2重単系制をもち、伝統的宗教と並んでキリスト教、イスラム教への改宗者も多く見られる。ギリアマはモンバサ北部の換金作物中心の海岸地帯から内陸の牛牧中心の乾燥地帯にまで広く分布し、その経済的基盤も多様である。出自はもっぱら父系のみを認め、宗教的にも伝統的な色彩が強く、キリスト教、イスラム教の影響はきわめて限られている。 各研究者は特定の対象集団を分担し、小田はディゴを、慶田と上田はギリアマの北東部および南西部を、浜本はドゥルマをそれぞれ中心にしてフィールド・リサーチを行った。吉田は研究代表者として各研究者の調査を調整するとともに、小田とともにディゴでのフィールド・リサーチに従事した。第2年度においては各研究者は他の研究者の担当地域における短期の調査を行い、調査者個人の資質によるデータの偏りを抑えるべく努めた。これら3年度を通しての調査によって、各研究者は全体地域についての概括的な把握に加えて、当該担当集団における病気の認知とその治療に関する知識の体系や文化的慣行についての体系的な記述と分析に必要かつ十分な詳細な民族誌的データと多くの具体的事例を蓄積している。これら研究成果は、それぞれ別個の刊行物として今後にわたっても順次公表していく予定である。こうした個別集団についての記述と分析の進行と並行して、本研究の目的である各集団間に見られる類似性と差異の評価、およびこれらの差異を各集団に特有の社会・文化的、および経済的諸変数に関連づけて説明しようとする作業も着手されている。 例えば、対象とする集団のいずれにおいても、病気や不幸の分類、主要な症状の記述、その可能な原因の同定、治療法の分類に、ほとんど同一の概念群が用いられているが、これらの諸概念の具体的な意味内容は各集団毎にしばしば大きな相違を見せることがわかっている。またいずれの集団も、病気や不幸を引き起こすさまざまなエージェントとして同じ種類のエージェントを認めているが(祖霊、憑依霊、妖術あるいは邪術、規範の侵犯、呪詛など)、どの種類のエージェントが実際の病気において最も引き合いに出されるかは、各集団毎に大きな対照を見せている。ギリアマにおいては妖術あるいは邪術がもっともしばしば言及されるのに対し、ディゴでは憑依霊が最も主要なエージェントの位置を与えられており、ドゥルマでは、憑依霊も頻繁に言及されるとはいえ、それと並んで屋敷内の親族規範の侵犯が病気や不幸の原因としてしばしば問題にされる。現在、こうした差異を各集団の置かれている文化的・社会的状況と関連させる作業が残されている。これらの分析の結果は近々のうちに、本研究分担者全員による共同出版物の形で執筆、刊行される予定である。
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