研究課題/領域番号 |
03041078
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
志方 俊夫 日本大学, 医学部, 教授 (50009932)
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研究分担者 |
AYE Thein Th Department of Medical Research
SHRESTHA S.M Bir Hospital, 内科部長
荘 輝 北京医科大学, 医学部, 教授
稲葉 裕 順天堂大学, 医学部, 教授 (30010094)
杉谷 雅彦 日本大学, 医学部, 講師 (40187654)
江角 真理子 日本大学, 医学部, 助教授 (60160363)
内田 俊和 日本大学, 医学部, 助教授 (80060078)
HUI Zhuang Beijing Medical College Professor
THEIN Thein Department of Medical Research, Myanmar, 研究員
S.M.SHRESTHA Bin Hospital, 部長
CAO Kueーyi 新彊衛生防疫站所長, 所長
CAO Xueーyi 新彊衛生防疫站, 所長
西園 晃 日本大学, 医学部, 助手 (70218155)
鈴木 高祐 日本大学, 医学部, 助教授 (00158974)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
16,000千円 (直接経費: 16,000千円)
1993年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1992年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1991年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | E型肝炎 / ウイルス核酸 / 動物モデル / ワクチン / E型肝炎抗体 / ウイルス性肝炎流行 / 散発性急性肝炎 / E型肝炎ウイルス遺伝子 / 抗体アッセイ系 / ウイルス遺伝子 |
研究概要 |
E型肝炎はA型肝炎とにて経口感染で伝播し、急性肝炎をおこすだけで慢性化しない。インド、ミヤンマー、ネパール、中国のウイグル自治区など南アジアを中心にして観察される。E型肝炎の様な未知の感染症の研究はだいたい研究方法はきまっていて、我々も常道に従って研究を進めた。1.先ず感染実験モデルを確立する。2.患者或は感染した動物からウイルスを分離する。3.ウイルスの核酸のクローニングをし塩基配列を決定する。4.この肝炎の血清免疫学的、又核酸からの診断方法を確立する。5.この診断キットを使用してこの肝炎の血清疫学的研究を行う。6.ワクチン、γ-グロブリンによる予防方法を確立する。そして現在我々の研究は1から5まできわめて順調に進み、あと6の研究を残すのみとなった。 E型肝炎の疫学と臨床:E型肝炎は多くの流行が報告されている他、散発性の肝炎もかなりある。我々の調査期間中でもトルファン、ヤンゴンで小流行があり、これらの流行からウイルスの分離、ウイルス核酸のクローニング、全塩基配列の決定を行うことができた。またこれらの地域では散発性の急性肝炎の中でもE型肝炎がかなりあることも明かにされた。この事実は北京、上海ですら散発性の肝炎の中に10%程度E型肝炎があることがはっきりした。今年度調査したチベットのラサでははっきりしたE型肝炎の流行は明かに出来なかったが、散発性の急性肝炎の4.3%がE型肝炎であった。なお日本では散発性の肝炎の内の非A非B型非C肝炎499例についてE型肝炎の可能性を調査したが、5例がE型肝炎であることが判明した。急性肝炎全体の0.3%に相当する。その内3例は流行地への旅行者であったが、2例は海外旅行をしておらず二次感染の可能性があった。インドでの肝炎の流行は、子供の間に流行するのはA型肝炎でこのE型肝炎は若い成人の間に流行する事が明かであった。この事実は他の国でも同様であり、一つの謎になっている。そのため再感染実験も行ったが、再感染は証明されなかった。このウイルスはA型肝炎ウイルスのように感染性が強くなく流行地でも全ての子供が感染して抗体を持つという様な状態にならない為かもしれない。 E型肝炎の感染実験:かにくいざる、あかげざるを使用し、十分なウイルス量を経静脈的に接種すれば100%感染が成立することが明かになった。ウイルスは血中のみならず胆汁中にウイルスを排出するが、胆汁中の殆ど純培養に近い形でウイルス粒子が証明された。肝炎の組織像は他のウイルス性肝炎と殆ど同じであった。 E型肝炎ウイルス:E型肝炎ウイルスは形態からカリシウイルスに似ている。このウイルスは凍結融解や塩化セシウムなどに対して比較的弱い。感染したかにくいざるの胆汁からRNAを抽出し、λgt11に入れてcDNAライブラリーを作製した。これからimmunoscrleening法によりE型肝炎ウイルスの核酸の一部のクローニングに成功した。ミヤンマー散発例の株とミヤンマー有効例の株、それにウイグル自治区の二株、合計4株のウイルスの全塩基配列を決定した。ミヤンマー株と中国株のホモロジーは塩基で93%、アミノ酸で98%であった。 E型肝炎の診断:釣り上げたクローンを抗原としてE型肝炎診断のためのE型肝炎抗体のEIA法によるアッセイ系を作った。この抗体アッセイ系はE型肝炎に特異的ではあるが、ORF2の部分のエピトープを使用した抗体はE型肝炎のトランスアミナーゼの上昇とともに陽性となるが、肝炎から回復すると3カ月ぐらいで陰性化する。従って急性のE型肝炎の診断にこのアッセイ系は使用できるが、血清疫学的調査には使用できないことが明かになった。 研究遂行上の問題点:E型性肝炎は主として開発途上国で見られ、これらの国々では保健衛生上重要な病気の一つである。所が日本では僅かな輸入肝炎の症例以外はほとんどない。この肝炎が蔓延している開発途上国で先進的な技術による研究は不可能にちかい。この様な意味からこのテーマは日本が開発途上国の保健衛生の貢献しうる最適なものであった。日本では市場がないため、日本の製薬会社はE型肝炎の診断試薬、ワクチンを作る意図が全く、我々の研究は5で終了せざるを得ないのが現状である。このような研究の継続が発展途上國援助の枠内でできるシステムが望まれる。
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