研究分担者 |
宮 次男 実践女子大学, 文学部, 教授 (10000449)
樹下 文隆 国文学研究資料館, 文献資料部, 助手 (70195337)
辻本 裕成 国文学研究資料館, 文献資料部, 助手 (90249920)
新藤 恊三 国文学研究資料館, 文献資料部, 教授 (80007161)
岡 雅彦 国文学研究資料館, 文献資料部, 教授 (20044729)
深澤 真二 国文学研究資料館, 文献資料部, 助手 (80218875)
鈴木 淳 国文学研究資料館, 文献資料部, 助教授 (40162953)
山崎 誠 国文学研究資料館, 文献資料部, 助教授 (70094696)
小峯 和明 国文学研究資料館, 文献資料部, 助教授 (70127827)
佐藤 悟 実践女子大学, 文学部, 助教授 (50178729)
竹下 義人 国文学研究資料館, 文献資料部, 教授 (90197286)
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研究概要 |
今年度は追加予算が認められたことにより,2度にわたって海外調査を実施することができ,予定した以上の大きな成果をあげることができた。 第1次調査は,平成4年9月20日より10月6日までの17日間で,松野研究代表者を中心に6名が赴き,まずパリ経由でダブリンのチェスタービーティ図書館の調査を10日間ほど実施した。昨年度の調査に続いて未調査分の奈良絵本や絵巻類,色刷の版本類を中心とする約百数十点を調査し,写真撮影を行った。また,すでに刊行されている弘文荘目録に収録されたもの230点はほぼ調査・撮影を完了したが,あわせて目録に漏れていた数十点をあらたに調査・撮影することができた。これには近世から明治にかけての版本が中心であり,さらに掛幅の仏教画や仏典も数点あり,なかでも両界曼陀羅図は室町期の作と思われ,従来ほとんど知られていないものとして注目される。ついでパリに戻り,国立東洋言語文化研究所のパスカル・グリオレ氏にご協力のもとに,北フランスの都市リールに赴いた。まず日本研究家のデュボワ氏のお宅に伺い,数々の貴重なコレクションを調査させて載き,あわせて北フランスにおける日本学の状況を具体的に伺い,ついでリール市立図書館のロニ・コレクションを調査し,一部を撮影した。ロニは19世紀フランスにおける日本語研究と教育の開祖である。浮世絵を中心とする一般のコレクションと異なり,日本語のテキストや独自に制作した版本などもあり,言語研究にあわせた内容の資料が多いのが特色である。この図書館の調査は今後も継続する予定である。再びパリに戻って。前年度に当館の客員教授として招聘した国立東洋言語文化研究所のオリガス教授と会合し,今後の調査についての情報や意見交換を行った。 第2次調査は2月24日から3月5日までの10日間で,小山館長以下の7名が赴いた。パリ経由でダブリンのチェスタービーティ図書館に行き,前回までの調査漏れや撮影の不備なものを再度調査・撮影し総点検を試みるとともに,さらにまた今まで知られていない未登録の資料30点あまりを調査・撮影することができた。限られた日程ではあったが,追加予算がつかなければこれらの新出資料の調査は不可能だったわけで,大変有り難く幸運であった。ついでメンバーをパリ班とロンドン班に2分し,前者はパリ国立国書館やギメ美術館の調査や高等研究院での情報収集を行い,後者は大英博物館・図書館の調査を行った。パリ国立図書館では一昨年以来のデューレコレクションの調査を継続し,大英国書館では日本部長のブラウン氏のお世話で奈良絵本・絵巻の調査を初めて試みることができた。一部は『在外奈良絵本』で紹介されているが,ほかにも未紹介の貴重な資料がすくなくない。今後,本格的な調査を総合的に実施する必要があろう。さらにケンブリッジ大学に赴き,欧州国書総目録の作成を推進しているコーニッキ助教授と会見し,今後の調査研究や情報交換の協力を確認しあうことができた。リール図書館はすでにコーニッキ氏によって目録が刊行される予定である。3月2日に両班はパリで合流し,翌日,国立東洋言語文化研究所で日本学の研究者や学生数10名と会合し,我々メンバーの現在の研究テーマや国文学研究資料館の意義について講演を行った。時間も短く不十分なものではあったが,多くの日本学の人々と貴重な意見交換をかわすことができたのは幸いであった。帰国後,チェスタービーティ図書館の資料と国内資料との関連をさぐる調査研究を遂行しており,在仏調査がテーマではあるが,先方の都合で緊急を要するチェスタービーティ図書館資料の詳細な解題目録を報告書として刊行する予定で準備を進めている段階である。国際協力の目標の一環としてこの解題目録の英訳もあわせて刊行したいと考えている。
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