中国江南・華南地域における古人骨の人類学的調査研究

• 研究課題/領域番号: 03041101
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 松下 孝幸 長崎大学, 医学部, 助教授 (80108282)
• 研究分担者: 潘 其風 中国社会科学院, 考古学研究所, 副研究員 ; 韓 康信 中国社会科学院, 考古学研究所, 研究員 ; 木下 尚子 梅光女学院大学, 助教授 (70169910) ; 植田 信太郎 東京大学, 理学部, 助教授 (20143357) ; 真鍋 義孝 長崎大学, 歯学部, 助手 (80131887) ; 六反田 篤 長崎大学, 歯学部, 教授 (10047821) ; 佐伯 和信 長崎大学, 医学部, 助手 (80195966) ; 分部 哲秋 長崎大学, 医学部, 講師 (50124847) ; BAN Kifu Chinese Academy of Social Associated Professor Sciences ; KAN Koshin Chinese Academy of Social Associated Professor Sciences
• 研究期間 (年度): 1991
• 研究課題ステータス: 完了 (1991年度)
• キーワード: 中国 / 江南 / 華南 / 古人骨 / 弥生時代人骨 / 渡来系弥生人 / 山東半島

研究概要

日本人の起源や日本人の形質の成立に関しては、日本国内の研究のみで解決できるものではなく、近隣諸国での出土古人骨の形質人類学的研究が並行して進展する必要があるという視点から中国の古人骨調査を平成3年度も昨年に引き続いて行なった。弥生文化は中国や朝鮮半島からの影響が強いといわれており、特に中国・江南、華南地域との関連が指摘されていることから、この地域での古人骨の調査を行ない、北部九州地域の弥生人との比較を行なった。昨年、江南、華南地域のうちで人骨の調査が可能であったのは、福建省と山東省の古人骨の一部のみで、いずれも紀元前3,000年前後の人骨群で、この時期は日本では縄文時代の後期に音当する時期である。今年度は北京に保管してある江南地域の人骨と中国北半地域に関して、古人骨と歯の調査を行ない、また山東半島の済南では五村遺跡や付家遺跡などから出土した古人骨と歯の調査を行なった。
山東半島では人工頭蓋変形が「大〓口人骨」ばかりではなく、「王因」などにも存在するし、また抜歯は「五村」遺跡や「付家」にも認められる。顔面の高径もやや高く、鼻根部扁平で、北部九州弥生人の特徴の一端がうかがえるが、骨質はやや堅い。このように山東半島の古人骨には九州には認められない風習的なものが存在するが、形質的には非縄文人的である。中国の古人骨と日本の弥生時代人骨では両者の時期差が大きすぎることや必ずしも身体のすべてにわたって共通した特徴を持っている訳ではないので、現時点でこの地を弥生人の渡来地であると特定することは今回の調査でもまだできない。
また、頭蓋の計測値9項目を用いてクラスタ-分析を行なってみたが、中国の古人骨はそれだけでひとつのクラスタ-を構成し、日本の弥生人や縄文人とはかなりかけ離れてしまう結果になった。これは中国人と日本人との形質的分離がかなり早くから生じていた可能性を示唆しているようである。
今後は北京保管でまだ調査していないものや山東半島および江南地域の古人骨群を各遺跡ごとにその特徴を明らかにしながら日本の古人骨との比較を今後も丹念に行なっていく計画である。