研究分担者 |
連 照美 国立台湾大学, 文学部, 教授
宋 文薫 国立台湾大学, 文学部, 教授
大塚 裕之 鹿児島大学, 理学部, 教授 (50041223)
松浦 秀治 お茶の水女子大学, 家政学部, 助教授 (90141986)
小池 裕子 埼玉大学, 教養部, 教授 (40107462)
多賀谷 昭 大阪市立大学, 医学部, 助手 (70117951)
茂原 信生 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (20049208)
石田 肇 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70145225)
松村 博文 国立科学博物館, 人類研究部, 研究官 (70209617)
LIEN Chao-mei Fac. literature, Dept. Anthropology, National Taiwan University・Professor
SUNG Wen-hsun Fac. literature, Dept. Anthropology, National Taiwan University・Professor
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研究概要 |
澎湖諸島海底出土右大腿骨下3分の1は、大きく、筋付着部の発達も良好であり、壮年男性のもとの考えられる顆間窩及び下関節面膝蓋が狭く、その点で港川人と類似する。粗線が数本に分離する点は希であるが、全体的には現生サピエンスの特徴に一致する。八里海岸からは、左大腿骨(男性)・右寛骨(女性)・左寛骨(男性)・後頭骨(性別不明)の4点の人骨が出土している。いずれも水磨を受けており、特に寛骨2点は貝殼が付着している。形態的には現生サピエンスと変わらない。以上2地点の人骨は良く化石化しており、後述のようにフッ素含量も高いので、更新世後期に属する可能性がある。柴山岩貝塚から出土した右大腿骨3点と右脛は粗線の発達や偏平性の点で基本的に縄文人と似ているが、骨壁の厚い点で港川人とも似ている。(馬場・宋・連) 中国ブロンズ時代(殷;1400ー1100B.C.)の安陽出土人骨の歯について計量的ならびに非計量的特徴のデ-タを探取し、種々の多変量解析によって周辺諸集団との比較をおこなった。その結果、安陽古代中国人の全体的な大きさは、現在の華北中国人や韓国人とほぼ同等であった。これらは日本の渡来系弥生人や古墳人よりは小さいが、縄文人やアイヌよりは大きい。全体的なプロポ-ションについては、安陽古代中国人は、現代華北中国人・韓国人・渡来系弥生人・古墳人・現代日本人と類似しており、縄文人やアイヌとは大きく異なることが明らかになった。非計量的な特徴においても同じ関係が認められた。以上のことから、安陽古代中国人の歯は北方系モンゴロイドとしての特徴をもつことが示唆された。全体的な歯の大さきの縮小傾向については、早くから発達した文明の影響と無関係ではないと考えられる。(松村・茂原) 中華民国中央研究院の、安陽出土の頭蓋骨について、小数ではあるが、計測ならびに非計測項目の観察をおこなった。顔面の平坦度について、計測した結果をおおまかにまとめると、つぎのようになる。かなり立体的な顔をした頭蓋骨、極端に平坦な顔の頭蓋骨があり、集団内の変異が大きそうである。この変異は、鼻骨の平坦度で、特に大きいように思われるが、より多くの頭蓋骨を計測しなけば、それを実証することは難しそうである。非計測項目については、眼窩上孔が約半数の頭蓋骨にみられた。(石田・多賀谷) 第四紀更新世の脊椎動物群化石の調査を実施した。1)台湾北西海岸の台北県林口郷賓斗暦海岸に露出し、人類頭骨化石を産出したことがある中期更新世の砂礫層の現地調査および同層産で、現生台湾の諸地域に所蔵中の脊椎動物化石群集の調査。その結果、ヒト(Homo sapiens)、台湾花鹿(Cervus taiouanus)、ジュゴン(Dugon sp.)、タイワンマンモス(Mammuthus cf.armeniacus taiwanicus)、サイ(Rhinoceros sp.)、イノシシ(Sus cf.lydekkeri sp.)からなる哺乳類化石を識別した。この内、前3者を除く哺乳類は前期更新世から洗い出された2次化石の可能性が大きい。2)台湾各地の研究機関及び民間に所蔵されている台湾海岐膨湖水道産の哺乳類化石群集を調査の結果、淮河象の他、ヒト(Homo sapiens)も含む多くの草食性・肉食性哺乳類を識別したが、この脊椎動物化石群集はその構成からみて、華北の周口店期(中期更新世)の動物群に対比され、東シナ海のいくつかの地点から知られている哺乳動物化石群とともに、生物地理学的に重要であることが明らかになった。(大塚) 八里海岸出土大腿骨及び澎湖諸島海底出土大腿骨のフッ素分析結果は、それぞれ0.952%と0.936%であった。この数値は、台南左鎮地域の少なくとも数10万年前に遡るとみられる化石骨のフッ素含量(平均2%前後:下田,1977)より低いが、菜寮出土人骨の0.76%(Shikama et al.,1976)より高く、完新世の岡子林人骨の0.17%(Baba et al.,1984)に比べればはるか高い。上記両大腿骨の年代に関しては、とりあえず更新世後期の可能性を想定しておいて矛盾はない。
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