研究分担者 |
OYASU R. 米国ノースウェスタン大学医学部, 病理, 教授
MOSTOFI F.K. 米国AFIP病理学, 主任
原田 正興 (原田 昌興) 神奈川県立がんセンター 臨床研究所病理, 主任 (20081648)
根本 良介 鳥取大学, 医学部, 助教授 (10006801)
菊池 孝治 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (30224900)
内田 克紀 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (20223555)
大谷 幹伸 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (80133081)
赤座 英之 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (70010486)
OYASU Ryoichi Prof., Department of Pathology .Northwestern University
PROUT G.R. ハーバード大学, 医学部, 教授
OYASU RYOICH ノースウェスタン大学, 病理学教室, 教授
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研究概要 |
前立腺ラテント癌,偶発癌の頻度には日米間で大差ないことが報告されている。しかし,アメリカ合衆国では臨床的顕在癌の頻度が高く,前立腺癌による死亡率は男性癌死因の第2位を占めている。それに対してわが国ではそれほど高率ではないものの年々増加傾向にある。これは本邦における寿命の延長や食生活を中心とした生活環境の欧米化などが要因として考えられている。そこでアメリカ合衆国と日本における前立腺癌の増殖に関わる腫瘍側因子および内分泌学的検索を主とした環境因子を形態学的に解析し,両国間におけるこれらの差異を解明して将来の前立腺癌患者の増加抑制に役立てようとするのがこの研究の目的である。 〔1〕病理組織的研究 前立腺癌の日米における組織学的異同を知ることは今後の本邦における前立腺癌の動向あるいは前立腺癌発生の要因を知る上で有用と思われる。米国National Prostatic Cancet Project(NPCP)で全米からA.F.I.P.に集積された症例987例と本邦集積症例1037例とを比較した。(1)偶発癌(STAGE A;偶発癌)の比較では,米国例では前立腺癌取扱い規約における中分化型,WHO分類に準拠した中等度核異型度,Gleasen score5以上に分類される症例の頻度が高く,本邦例では高分化型,軽度核異型度,Gleasen score2-4の症例が多かった。また米国症例では我々の分類基準におけるSTAGEA2癌(直径10mmを越える病巣を有する高分化腺癌、あるいは癌巣の大きさに関係のない中分化または低分化腺癌)に相当する症例が多く、この結果が前立腺顕在癌の頻度の相違に影響しているものと思われた。(2)臨床癌(STAGEB以上)の比較では、本邦例では診断時既にSTAGEDの症例が多い傾向がみられた。また米国症例でSTAGEC,Dの進行癌でも高分化腺癌、低核異型度癌の頻度が高い傾向がみられた。本邦例では米国例に比して診断時点で既に高度に進行した組識学的に高異型度の予後不良例が多い傾向がうかがわれ、前立腺癌の発見の遅れとともにその自然史を含めた臨床癌の性格に差のあることが示唆された。(3)日米両国の症例をWHO(Mostofi)による組織型分類に準拠した6組織型(large and small,LSG,microgland;MJC,crilriform;CRB,fused gland;FUS,medullary;MED,columm and cord;C-C)の標本における構成比を簡易計測により求めて検討した。本邦例では臨床癌において,CRB,MED,C-Cの頻度が,米国例ではLSG,MJCの平均構成比がSTAGE別にみても全体でも有意に高かった。この結果は前立腺癌の組織発生について,その初期段階において単純腺管型と,篩状腺管型の2系統があるという説からも,日米前立腺癌の組織発生が異なることを示唆する結果とも考えられる。 〔2〕免疫組織化学的研究・その他 (1)抗prolifersting cell nuclear antigen (PCNA)抗体を用いた日米前立腺癌の細胞動態解析:本邦65症例に対してL.I.を討検したところ,L.I.はgrodeと相関した。(2)抗p53抗体を用いた日米前立腺癌の比較:本邦43症例に対して検討したことろ,その発見は核異型度と相関する傾向を示した。(3)In situ hybrido chemistry(ISHC)を用いた日米前立腺癌染色体の数的異常に関する検討:染色体#1,#3,#7,#10,#11,#17,#18,#Xおよび#Yプローブを用いて検討したところ,米国症例においては予後不良例において#17の数的異常を認める頻度が高く,ついで#11および#7の数的異常を認める頻度が高かった。本邦側については現在解析中である。(4)画像解析装置を用いた日米前立腺癌の核DNA量の測定:画像解析装置としてLeit社製TASシステムと解析用プログラム(COMPS)を用いて,Feulgen染色した組織切片の核DNA量を計測しploidyを判定した。proidyは両国症例とも病理学的悪性度と相関を示した。(5)放射光蛍光エックス線分析法による前立腺癌組織内微量元素二次元イメージング:陽子線を用いてホルマリン固定パラフィンブロック包埋標本に対して検討した。Cu,Znといった微量元素は正常組織よりも癌組織およびその周囲組織に高濃度に分布する事が明らかとなった。又,前癌病変といわれる異型 形成病変にも高濃度に分布しており,これらの知見は今回の研究で初めて明らかとなった。
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