研究概要 |
北米西部の乾燥地や蛇紋岩地で著しく多様化し,大量に生育している粘液分泌植物を中心に,1991と1992年の2年度にわたり,北米西部地域で調査・採集し,これら植物から調製した成分の抽出エキスについて,HIV-1逆転写酵素阻害活性(愛知県がんセンター研究所:小野克彦,中根英雄),抗発ガンプロモーター活性(京都府立医大;岩島昭夫,西野輔翼,徳田春邦),マウス白血病P388抑制活性(癌研究会・癌山学療法センター;田代田鶴子,須藤洋次郎)をそれぞれ上記施設の諸先生の御協力により検討し,抗ガン成分の検索・同定を行い,抗ガン性物質の探索・開発に資することを目的とした。 1。研究成果(その1;1991年度探集分について)(1)植物資料について;1991年夏にオレゴン州南西部のAshland近辺,River上流,カリフォルニア州北部等で種子植物35科81属103種,シダ植物1科2属2種を探集し,うち86種(粘液分泌植物46種を含む)を活性研究用資料とした。薬,枝,地上部,地下部等に分別した後,粘液分泌植物では,粘液物質をacetoneで,続いてethanol(and/or 70% ethanol)で順次抽出し,その他の植物では,ethanol(and/or 70% ethanol)で抽出した。調製したacetone ethanol,70% ethanolの各エキスを以下の試験に用いた。 (2)HIV-1逆転写酵素阻害活性;1-epigallo-catechin gallateを指標として阻害の強さを5段階濃度(0.5,1,2,5,10μg/ml)で測定した。86種中46種の植物において ,10μg/mlで50%より強い阻害が認められた。中でも,polygonum majus (全草),purshia tridentata(枝),Potentilla gracilis(地下部),Ceanothus integerrimus(枝),Arctostaphylos viscida(地上部),Grindelia nana(地上部)等のetanolエキスは特に強い阻害活性(0.5μg/mlで20%>)を示した。Purshia tridentataの活性成分としてB-sitosterolgluciside(IC_<50>=1.8μg/ml),Amelanchier alnifolia var.pumi
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la(枝;ethanol.)の活性成分として,ursolic acid及びbetulinic acid(IC_<50>=1.4μg/ml及び0.8μg/ml)を同定するなど,活性を示したエキスから成分の分離・構造研究を行い,活性本体の探索を進めている。 (3)抗発ガンプロモーター活性;Epstein-Barr virus-早期抗原発現試験により,発ガンプロモーター抑制物質を検索した。100μg/ml濃度で0-40%,1μg/mlで100%未満の抑制活性を示すものを,″活性あり″とした。アセトンエキスでは,Sophora leachiana(地上部),Eriodictyon californicum(全草)等15種に,エタノールエキスでは,上記2種の他,Boisduvaria densiflora(全草)等47種に活性が認められた。これらのエキスについて順次活性成分の検索を進めているが,E.callfornicumからの5,7-hydroxy体など3種のflavanone成分,Cordylanthus viscidus(全草)からのermarinなど4種のflavonol成分に活性が認められている。 (4)マウス白血病P388腫よう抑制活性;P388腫よう細胞移植マウス(一群6匹)を用い,天然物では無処置群に対する生存日数の比が130%以上を有効とする。現在まで,エキス量の多い115検体(57種)で実験が終了したが,有効なものは見いだされていない。 2。研究成果(その2;1992年度探集分について)1992年夏は,主にオレゴン州南東部,Burnsの南方乾燥(砂漠)地帯,Harney盆地等で,種子植物39科104属160種,シダ植物2科2属2種,地衣類1種を探集した。前年度と同じ要領で,acetone(52検体),ethanol又はthanol(211検体),70%ethanol又はmethanol(93検体)の各エキスを調製し,各種抗癌活性を検討中である。現時点で,Rosa woodsii(葉),Ribes anreum(枝)等9検体(46検体中)に強い抗HIV-1活性が認められ,Prntagrama triangularis(地上部),Prunus emarginata(枝)等14検体(55検体中)に発ガンプロモーター抑制活性が認められている。引きつずき,活性試験,成分検索を検討中である。 隠す
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