研究分担者 |
李 家駒 中国科学院地質研究所, 助教授
宋 学信 中国地質科学院鉱床地下研究所, 教授
范 徳廉 中国科学院地質研究所, 教授
三浦 裕行 北海道大学, 理学部, 講師 (70157436)
松枝 大治 北海道大学, 理学部, 助教授 (20108921)
皆川 鉄雄 愛媛大学, 理学部, 助手 (40145058)
桃井 斉 愛媛大学, 理学部, 教授 (00037160)
LI Jiaju Assistant Prof., Institute of Geology, Academia Sinica
SONG Xuexin Professor, Institute of Mineral Deposits, Chinese Academy of Geological Sciences
由井 俊三 北海道大学, 理学部, 教授 (10006637)
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研究概要 |
堆積性マンガン鉱床は世界のマンガン資源のなかでも重要なものの一つで,中国においても大規模な多くの鉱床が開発され天然鉱物資源の一つとして重要な位置を占めている。本研究は日本と中国の堆積性マンガン鉱床の比較研究を行い,特に鉱物学的,地球化学的見地から中国科学院地栃研究所との共同研究として大陸地域(中国)と島孤(日本)での金属濃集機構の相違を明かにし,鉱床形成過程に関する理論を確立することを目的とした。研究対象地域は北海道北見地域と中国朝陽市郊外のWafangzi鉱床をえらび,鉱床露頭,坑内調査を行い試料採集鉱物共生関係,変成作用の影響などの野外調査を行った。室内では鉱物相の組織変化の追跡,化学組成や微量金属元素,希土類元素の分析を行い両地域の対比をおこなった。 1.地質及び鉱床の特徴 Wafangziマンガン鉱床はmiddle Proterozoicの中,上部Tielin Formationに胚胎しており,母岩はshale,silt,limestoneを主体とした堆積相である。鉱体は3層認められ,一部は後期火成岩によって熱変成作用を受けている。鉱床はNiufedongzi断層によって北部と南部に分けられ,それぞれ5-6の鉱体に分けられる。 北海道北見地域の鉱床はCretaceousのred chert中に胚胎する堆積性鉱床で,Wafangziとは時代も大きく異なりまた母岩からみる堆積環境も全く異質である。鉱体はレンズ状でその規模も小さい。むしろ北米西海岸のFranciscan Formationの鉱床に類似する。 2.鉱床の鉱物組成と鉱物の化学組成 Wafangzi鉱床の主な鉱物はManganiteとRhodochrositeである。Manganiteは普遍的に産出するが,Rhodochrositeは鉱床の北西部の鉱体に広くみられる。Rhodochrosite中にはTotal Feで15%以上のFerro-rhodochrositeとよばれる鉱石も多い。接触変成を受けた鉱体ではBixbyite,Braunite,Jacobsiteなどの鉱物が形成されており,接触帯に特徴あるDiopside,Garnetが普遍的にみられる。また北西部の接触部ではPyrosmalite-Rhodochrositeの共生がみられるが,おそらく後期Hydrothermal solutionによって形成されたものである。このような部分ではPyrite,Chalcopyrite,sphalerite etc.のsulphide mineralも産出する。特にJacobsiteはFe-richからMn-richまで幅広い化学組成を示し,後期変質作用の元素移動が複雑であった事をしめしている。 北海道北見地域ではWafangzi鉱床とは全く異なった鉱物共成関係をしめす。すなわちBrauniteを主とし,微量のCryptomelaneときにはHausmanniteのような酸化鉱物の組合せからなっている。両者の違いは堆積環境と後期変成,変質作用の違いによるものである。 3.微量金属元素およびREEの挙動 Fe-Mn-(Co+Ni+Cu)x10の三角図ではWafangzi鉱床,北見地域の鉱床共にHydrothermal originの領域にプロットされるが,前者ではPbが後者ではCuの含有量増加が顕著である。Wafangzi鉱床では一層,二層,三層と後期の堆積鉱層ほどPb含有量が増加することは興味のあることである。REEの挙動は両者ともCeの負の異常が認められ,堆積性起源の鉱床であることがうかがえる。鉱物相の違いにもかかわらず微量金属元素やREEの挙動は似た傾向をしめす。 堆積性マンガン鉱床である中国Wafangzi鉱床と北海道北見地域のそれとを比較研究した結果両者は熱水性起源の鉱床であることがしられた。しかし鉱物組成,鉱床規模などには大きな違いがみとめられる。もちろん形成年代には大きな違いがあり,また後期変成,変質作用にも大きな違いが認められる。堆積による初期形成鉱物は,非晶質含水二酸化マンガン鉱物と考えられるが,堆積環境や埋没変成作用の温度,圧力の違いにより異なった鉱物相の形成をしめすものと考えられる。日本列島での古生代のマンガン鉱床でもWafangzi鉱床のようにManganiteを主鉱物とする鉱床は知られていない。これは大陸地域(中国)と島孤(日本)の火成活動,堆積盆や堆積環境の違いをしているものとかんがえられる。中国大陸南部には多くの大規模なマンガン鉱床がしられている。さらにこれらの鉱床との比較研究は古環境の復元と鉱床生成の理論の確立のためにもぜひ必要であり,マンガン資源の探査にも寄与するところが大きいと考えられる。
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