研究分担者 |
OSHIRO Raymo ホノルルコミュニティカレッヂ, 講師
SUPANNATAS S マヒドン大学, 公衆衛生学部, 助教授
GROSSMAN Jer ハワイ大学, 公衆衛生学部, 教授
杉田 聡 東京大学, 医学部, 助手 (00222050)
吉田 亨 東京大学, 医学部, 助手 (80174936)
山崎 喜比古 東京大学, 医学部, 助手 (10174666)
佐久間 充 東京都老人総合研究所, 保健社会学研究室, 室長 (90010066)
川田 智恵子 東京大学, 医学部, 助教授 (60010013)
SUPANNATUS Somjit Assoc. Professor, Dept. of Public Health, Mahidol University
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研究概要 |
近年の健康問題の変化、専門家と一般の人々の問題解決にあたっての関係の変化、家族構成の変化、産業の変化、そしてこれらに伴う地域社会の構成と機能の変化は、程度の差こそあれ、先進国、開発途上国を問わず表面化しつつある。 今回、米国(ハワイ)、タイ、日本の三ケ国の研究者が共同して本課題に取り組んだのは、保健領域においてもパラダイムの変換を迫られている今日、一つの国だけでなく、国際的なレベルの地域社会を基盤としての健康問題への取り組みの研究の必要性を感じたからである。 本年度の研究の大枠は、文献研究と現地調査から成り立っている。文献研究は、保健分野での地域レベルの自発的問題解決の歴史的考察と、自発的問題解決能力に関連する鍵概念を同定し、その意味について考察した。現地調査は、原則として都市部とし、米国はホノルル市、そしてタイはバンコク市に定め、それぞれ活発な地域活動を展開している地域を現地の研究者に選んでもらい、各地域を訪問し、観察を実施し、コミュニティ・リ-ダ-、専門家、行政側の人々への面接や資料分析によって調査を行なった。 《文献研究》 歴史的には、米国も日本も、公衆衛生関連の地域をベ-スにした自発的問題解決の活動が1900年頃には始まっていることが文献にはみられるが、内容やプロセスには違いがある。しかし、その後の政治、経済、社会情勢により、拡大されたり、反対に縮小されたりしている。 地域を基盤とした取り組みがとりわけ必要とされている現在の健康問題としては、日本では高齢者や障害者の健康・福祉、育児、慢性疾患のケア、リハビリテ-ション、精神保健、環境保健などが、米国においては環境問題、過剰人口や搾取されている人々の問題、精神保健、薬物・アル-ル依存、医療費の高騰、高齢者保健・福祉などの問題が、そしてタイでは従前からの低栄養、伝染病などに加えて、成人病の増加、エイズの問題がクロ-ズアップしてきている。 自発的問題解決能力の鍵概念としては、human dignity,open society,self reliance,subjectivity,self control,problem solving capability,participation,self organizational capabilities,inner power,empowerment,independence,autonomy,leadership,social support,volunteer activities,networking,community development,consumer movement,decentralization,judicious use of science,humanitarian dimension,problem orientation,multilevel focus,action orientation,innovation,dissemination等があげられた。個々の定義づけについては、文献により、また研究者により意味内容や位置づけなどの違いがあるので、個人、グル-プ、地域レベルの分け整理を行なった。 《現地調査》 米国については、一つはホノルル市のカリヒバレ-プロジェクトという低所得者層の居住する公営住宅地域の活動で、住民組織があり、専門家と協力して問題解決をしている。住民の30%は10年以上居住しているが、毎年20%程度の出入りがある。母子保健では特に片親家庭の育児問題がある。次は、ワイアナエ-コ-スト包括保健センタ-プロジェクトで、ハワイ系住民の多い農村地域で、行政、ハワイ大学、民間組織が協力して一種のモデル地域活動であり、住民参加のフォ-マルな型ができ上がっている。 地域保健での行政の対応をみると、日本の場合は、全住民を対象に平等なサ-ビスをしようとする方針があるのに対し、米国ではプロジェクト方式で低所得者層またはマイノリティグル-プに絞ってサ-ビスすることが多いので、今後行政の係わり方を含めた検討が必要である。さらに、ホノルル市の中産階級の多く居住する地域の調査が必要である。 タイのバンコク市では、マヒドン大学と市が協同で実施しているスラム地区を対象とした地域開発プログラムの4カ所を調査した。世帯数、人口、地域特性、住民組織の委員会の構成、健康問題、ヘルスケアサ-ビスの利用、ヘルスボランティアの活躍について調査した。これらの地域は、親戚や同郷出身者が集まっていることもあり、地域の結束が元来強い事が分かった。次には、地方から出てきて市内の工場に勤める人の多い地域を対象とした調査が必要である。
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