研究分担者 |
H.R.OTT スイス連邦工科大学, ポールシェラー研究所, 教授
T.M.RICE スイス連邦工科大学, 教授
三宅 和正 大阪大学, 基礎工学部, 助教授 (90109265)
永長 直人 東京大学, 工学部, 助教授 (60164406)
倉本 義夫 東北大学, 理学部, 教授 (70111250)
川上 則雄 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教授 (10169683)
今田 正俊 東京大学, 物性研究所, 助教授 (70143542)
上田 和夫 スイス連邦工科大学, ポールシェラー研究所, 客員教授 (70114395)
MIYAKE K Assoc. Prof., Faculty of Engineering, Science, Osaka Univ.
UEDA K Visiting Professor, Paul Scherer Institute
IMADA M Assoc. Prof., ISSP, Tokyo Univ.
OTT H.R. スイス連邦工科大学, ポールシュラー研究所, 教授
RICE T.M. スイス連邦工科大学, 教授
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研究概要 |
強相関係の電子状態とその物性,とくに磁性と超伝導について広汎かつ基礎的な研究が展開された。強相関係としては銅酸化物高温超伝導体,種々の酸化物,重い電子系,有機導体,量子細線が代表的である。 1. 高温超伝導 銅酸化物高温超伝導体の低エネルギー励起状態について,t-JモデルのRVB状態に基いた理論的研究が進展した。とくに,中性子散乱,核磁気緩和の実験で明らかになっていた実験的な特徴,とりわけ高ドーピング域と低ドーピング域に於ける定性的な差についての理論的解釈の可能性が提案された(福山)。元来この問題について重要な指摘を最初にしたのがRiceである。加えて,このモデルでの輸送係数についての研究も深まり(永長),これに関しても理論と実験は定性的によく対応することが明らかになってきた。このようにt-JモデルのRVB理論は高温超伝導に関する他の様々な議論と異なり,実験事実と具体的に比較できる結論を導くため,理論的理解の進歩に大変寄与している。 一方,t-Jモデルについての数値計算も行なれ,1次元系については相図についての詳細な知見が得られた(Rice)。しかし2次元t-Jモデルについての数値計算はやはりこれからの課題である。Y系の高温超伝導が発見された当時からの不思議であったPrBa_2Cu_3O_7の絶縁状態の起源について新しい提案がなされた(Rice)。 2. 酸化物・モット転移 酸化物ではモット転移がしばしば出現する。これを記述するモデルとしてハバード・モデルが候補となる。このモデルでのモット転移の振舞いが数値計算により詳細に調べられた(今田)。その結果,転移に近づくにつれ有効質量が発散することが明らかになった。この重要な知見は種々の酸化物で確認されると同時に銅酸化物高温超伝導体系がこれとは異種の系であることを明確にした。このことから2種類の異なったモット転移が存在するとの提案がなされた。 3. 重い電子系 以前より提唱されていたこの系における遍歴性と局在性の関係についての統一的描像が更に詳細に検討が加えられた(倉本,三宅)。この系のモデルと考えられる近藤格子ハミルトニアンの相図が1次元の場合について解析的・数値的方法を駆使することにより決定された(上田)。この系で実現していると考えられる異方的な超伝導状態でのド・ハース・ファンアルフェン振動の可能性が明らかにされた(三宅)。 4. 有機導体 有機導体に於いてもCuイオンを含む(DCNQI)_2Cuがその特異な物性で注目されている。即ち,金属・絶縁体転移は大きなとびをもち絶縁体状態に於ては,3倍超周期構造が出現すると同時に局在磁気モーメントが生ずる。更に,パラメーターの領域によってはリエントラントな金属状態が見られる。これらの全ての性質が,強相関系のパイエルス転移として理解出来ることが示された(福山)。加えてリエントラントがCH_3の回転運動のトンネル効果に対する散逸効果に起因するとの提案もされこれからの発展が期待される。 5. 量子細線 半導体で作られた量子細線では1次元電子系が実現する。このような系ではフェルミ流体は不安定となり朝永・ラッティンジャ液体が実現する。この状況での接合を通じてのトンネル電流特性(永長)及び電気抵抗の温度依存性(福山)予言された。 6. 厳密解の発見 上に述べた実験の説明を意図した理論的研究の他に,数学的に厳密に解けるモデルの発見という重要な寄与がなされた(倉本)。1次元長距離t-Jモデルである。このモデルの持つ驚くべき深い内容が明らかになりつつおる(倉本,川上)。
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