• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

アルファ線内部被曝の晩発影響における人種差-トロトラスト患者による日独比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 03044054
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分共同研究
研究機関東京大学

研究代表者

町並 陸生  東京大学, 医学部(医), 教授 (30010052)

研究分担者 WESCH HORST  ドイツ癌研究センター, 放射線部, 研究員
WEGENER KURT  ルードヴィヒハフェン市立病院, 病理部, 部長
KAUL ALEXAND  連邦放射線防護庁, 機関長
VAN Kaick GE  ドイツ癌研究センター, 放射線部, 教授
石川 雄一  癌研究会癌研究所, 病理部, 研究員 (80222975)
森 武三郎  放射線医学総合研究所, 特別研究員 (00124248)
岩田 志郎  京都大学, 原子炉実験所, 名誉教授 (50027398)
神代 正道  久留米大学, 医学部, 教授 (90080580)
志賀 淳治  帝京大学, 医学部, 教授 (10110694)
神山 隆一  東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (20014095)
畠山 茂  東京医科歯科大学, 医学部, 名誉教授 (30045926)
KAICK Gerhard van  German Cancer Research Center
WEGENER Kurt  ルートヴィヒハーフェン市立病院, 病理部, 部長
WESCH Horst  ドイツ癌研究センター 放射線部, 研究員
KAUL Alexand  連邦放射線防護機関, 機関長
VAN Kaick Ge  ドイツ癌研究センター, 放射線部, 教授
研究期間 (年度) 1991 – 1992
研究課題ステータス 完了 (1992年度)
配分額 *注記
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1992年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1991年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
キーワードアルファ線 / 内部被曝 / トロトラスト / 悪性腫瘍 / 病理組織学的診断 / 疫学 / ラドン / 日独比較 / 肝悪性腫瘍 / 白血病 / 肺癌
研究概要

アルファ線の内部被曝の晩発影響における日独差を検討するため,日本より2名の研究者をドイツに派遣し,ドイツより2名の研究者を招聘し,日独研究者相互の理解を深めるとともに,以下のような研究成果を得た。
鉱山に働く人々に肺癌が多いという事実から,アルファ線を放出するラドンが肺癌を誘発すると考えられている。トロトラストを投与された患者では,^<233>Thに由来するラドンが肺から放出されている。そこで本研究では日本のトロトラスト患者における肺癌の頻度が対照例に比して高いかどうかを検討したところ,肺癌全体としては頻度に有意差はなかったが,ラドンと関連があると考えられる小細胞肺癌の頻度はトロトラスト患者では有意に高いことが明らかとなった。従って鉱山に働く人々に肺癌が多いのは,鉱山のラドンと塵埃の両方の作用によるものであることを示している。日本のトロトラスト患者に関するこのような事実は,ドイツにおける動物実験で裏づけられた。即ち,ラットに石英の粉未を吸引させたのち,トロトラストを静注したところ,40%に肺腫瘍の発生がみられたが,トロトラスト投与のみでは3%にしか肺腫瘍が発生しなかった。
ドイツにおけるこれまでの研究結果より以下のような事実が明らかとなった。トロトラスト患者の肝には前癌病変と言えるような肝細胞の増殖巣がみつからない。クプファー細胞の前殖がヒトにおける前肉腫病変である可能性がある。ヒト及び動物の血管肉腫細胞にはトロトラスト粒子の沈着はない。ラットには実験的に血管肉腫とクプファー細胞肉腫の2種の肉腫が発生する。脾及びリンパ節には^<233>Thが多量に沈着しているのに腫瘍が発生しない。トロトラスト注入局所に生じたトロトラスト腫瘤の周囲に腫瘍が発生しない。このような事実は種々の未解決の問題を含んでいると考えられる。
日本のトロトラスト患者には肝細胞癌の発生する頻度がドイツにおけるよりも高いが,これは日本人には肝細胞癌の頻度が高いという一般的な事実を反映していると考えられる。また,トロトラスト患者に発生した骨肉腫症例の病理組織像を検討したところ,通常の骨肉腫症例との間に差違がみられず,日本のトロトラスト患者に発生する肝細胞癌や骨肉腫において,トロトラストが実際にどのように発癌に関与しているかは,まだ未解決である。
生体内に沈着しているトリウムに関連して発癌がみられることはこれまでの研究から明らかであるが,トリウムの沈着と発癌との関係をより明確にするためには,臓器中のトリウムを正確に定量することが必要である。トロトラスト患者臓器中のトリウムの定量には,試料のガンマ線測定,あるいは放射化分析法が用いられてきた。本研究ではトリウムを簡便に定量することを目的として,アルセナゾIIIによる比色法について検討した。本実験において比色法で得られた分析データは,ガンマ線測定および放射化分析により得られたものとほぼ一致したが,トロトラスト患者臓器中のトリウムの定量を行う場合には,可能な限り複数の分析法により,相互比較を行って定量することが望ましいことがわかった。
今回のドイツからの研究者との討議により,以下の重要な事実が明らかとなった。ラットにトロトラストを投与後4週間たってから肝切除を行い,トロトラストの沈着のない新しい肝を移植して,その移植肝におけるトリウムの量を測定したところ,移植後231日までに,トリウムの量が1.1mgまで増加した。これは切除肝のトリウム含量(28mg)の4%に相当する。この実験事実は体の中に沈着したトロトラストは,肝や脾にとどまっているだけではなく,その一部は体の中を移動しており,主な沈着臓器以外にも慢性の照射効果があるものと考えられる。

報告書

(2件)
  • 1992 研究成果報告書概要
  • 1991 実績報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (11件)

  • [文献書誌] ISHIKAWA, Yuichi: "Lung cancers associated with Thorotrast exposure : High incidence of small-cell carcinoma and implications for eatimation of Radon risk." International Journal of Cancer. 52. 570-574 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1992 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] 渡利 一夫: "トロトラスト患者臓器中のトリウムの定量-アルセナゾIIIによる比色定量の適用-" 保健物理. 27. 223-226 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1992 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] KATO, Yoshio: "Use of a portable Rn-220 detector for assessment of Thorotrast exposure." Health Physics. 63. 119-123 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1992 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Spiethoff, Andreas: "The effects of Thorotrast and quartz on the induction of lung tumors in rats." Health Physics. 63. 101-110 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
    • 関連する報告書
      1992 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Ishikawa I, Mori T, Kato Y, Tsuchiya E,: "Lung cancers associated with Thorotrast exposure : High incidence of small-cell carcinoma and implications for estimation of radon risk" International Journal of Cancer. 52. 570-574 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1992 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Watari K, Morimoto T, Imai K, Kato Y, Mo: "Analysis of Thorium in Thorotrast patient's organs - Colorimetric determination with Arsenazo III" Hoken Butsuri (IN Japanese). 27. 223-226 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1992 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Kato Y, Ishikawa Y: "Use of a portable Rn-220 detector for assessment of Thorotrast exposure" Health Physics. 63. 119-123 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1992 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Spiethoff A, Wesch H, Wegener K, Klimisch H-J: "The effects of Thorotrast and quartz on the induction of lung tumors in rats" Health Physics. 63. 101-110 (1992)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
    • 関連する報告書
      1992 研究成果報告書概要
  • [文献書誌] Ishikawa Y.,Mori T.,Kato Y.,Machinami R.Sugano H.and Kitagawa T.: "High incidence of small cell lung cancer association with Thorotrast exposure." Japanese Journal of Cancer Research.

    • 関連する報告書
      1991 実績報告書
  • [文献書誌] 石川 雄一,土屋 永寿,加藤 義雄,森 武三郎,菅野晴夫,北川 知行: "日独トロトラスト被注入者の肺アルファ線量の比較に関する考察" 日本癌学会総会記事. 50. 22 (1991)

    • 関連する報告書
      1991 実績報告書
  • [文献書誌] 石川 雄一,森 武三郎,丸山 隆,神山 隆一,畠山 茂,町並 陸生,菅野 晴夫,北川 知行: "トロトラスト被注入者における胸腹部の悪性中皮腫および肉腫の発生" 日本病理学会会誌. 80. 142 (1991)

    • 関連する報告書
      1991 実績報告書

URL: 

公開日: 1991-04-01   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi