研究課題/領域番号 |
03044055
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大塚 正徳 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (60013801)
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研究分担者 |
BAUGHMAN Rob ハーバード医科大学, 医学部, 副教授
鈴木 秀典 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (30221328)
村越 隆之 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (60190906)
吉岡 耕一 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (00143579)
柳澤 光彦 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (90159252)
BAUGHMAN robert W. Harvard Medical School Faculty of Medicine, Associate Professor
ROBERT Baugh ハーバード医科大学, 医学部, 副教授
斎藤 公司 (斉藤 公司) 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (20002082)
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研究期間 (年度) |
1991 – 1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1992年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 神経可塑性 / 組織培養 / 大脳皮質 / 脊髄 / シナプス伝達 / グルタミン酸受容体 / サブスタンスP / アセチルコリン受容体 / c-fos / substance P / phorbol ester / cーfos |
研究概要 |
本研究では中枢神経系をin vitroで維持し、ニューロン活動とシナプス形成の関係を長期的に観察することによって神経可塑性の研究を行うことを目指してきた。特に発達期の中枢神経において神経活動がシナプス形成におよぼす影響、その過程における伝達物質の修飾作用を生理学、生化学の両面から検討することを目的としていた。そのために以下の4種の中枢神経標本を用いて電気生理学的検討と細胞生物学・生化学的検討を行った。:まず亜急性実験として、1)新生ラットからの摘出脊髄標本、2)幼若ラット大脳皮質スライス(厚さ400μm)標本、次により慢性的な実験として、3)生後数日以内のラットの大脳、脊髄および脊髄後根神経節から細胞を酵素的に単一神経細胞まで分離し、3〜5週間維持する単離培養標本、4)大脳、海馬、脊髄からのスライス(厚さ100〜200μm)を静置培養して数日間維持するスライス培養標本、の4種である。これらのうち、1)と2)についてはすでに我々の教室で利用されていたが、3)と4)に関しては、共同研究者であるR.Baughmanを中心に開発が進められ、実用が可能になった。 まず発達期に可塑性発現に促進的に作用すると考えられているアセチルコリンについて、中枢ニューロンに対する作用を、単離培養細胞からのwhole-cell patch-clamp recording,摘出脊髄標本での細胞外記録、および急性スライス標本で微小電極を用いた細胞内電位記録法により電気生理学的に調べた。その結果、ムスカリン性レセプターを介して、皮質および脊髄ニューロンに対する直接的な興奮作用が観察された。これらはムスカリニックレセプターのM_3タイプを介するという点が両者で共通していた。さらにムスカリン作動薬は皮質において興奮性シナプス後電位および抑制性シナプス後電位を、脊髄において興奮性シナプス後電位をいずれもシナプス前性に抑制した。次に皮質において基本的な興奮性伝達物質であるグルタミン酸が作用するレセプターのうち代謝型レセプター(metabotropic glutamate receptor)を活性化させる薬物であるtrans ACPDの皮質単離培養細胞に対する直接作用を検討したところ、10-100μMの濃度域において、脱分極反応を誘発することがわかった。 長期にわたるシナプスの可塑的な変化にはシナプスや細胞の形態、代謝の変化も伴うことが期待されるが、その際には外来刺激に反応して細胞の遺伝情報発現が誘発される可能性がある。Immediate Early Genesの一つであるc-fos遺伝子は末梢痛み刺激に応じて脊髄神経細胞で、また痙攣発作に応じて大脳皮質や海馬ニューロンで発現することが知られている。この遺伝子が神経活動に伴う伝達物質受容体活性化によって発現するか否かを単離およびスライスでの皮質、海馬または脊髄培養標本を用いて調べた。刺激として培養液に1)高カリウム(50mM)、2)サブスタンスP(10μM)、3)フォルボールエステル(phorbol2,3di-acetate,1μM)を1時間加え、正常液にて洗浄5時間後にc-fos蛋白抗体を用いた免疫組織化学的検索を行った。その結果、単離培養での大脳皮質ニューロンでは3)のフォルボールエステルが免疫陽性細胞の顕著な増加をもたらし、他の刺激では著変はなかった。脊髄ニューロンでは2)のサブスタンスPが若干の増加を示し、他は変化がなかった。次に単離培養標本より生理的状態に近いスライス培養標本で同様の刺激の効果を見た場合、各組織共3)のフォルボールエステルが著しい増加作用を見せたが、他は変化がなかった。この結果は3)が陽性であった点で単離培養細胞の場合と一致したが、脊髄の2)が陰性である点が異なっている。脊髄では痛みに関係する一次知覚ニューロンの伝達物質がサブスタンスPであることから、単離細胞のように2)が有効であることは末梢感覚刺激が可塑的変化に関与することを示唆させたが、スライス培養標本で再現しなかったことは、刺激薬物の細胞への到達のしにくさの問題であるのかも知れない。
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