研究課題/領域番号 |
03044062
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
武者 利光 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (70016319)
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研究分担者 |
BLOM S. ウプサラ大学, 医学部, 教授
HAGBARTH K.ー ウプサラ大学, 医学部, 教授
岡本 良夫 千葉工業大学, 工学部, 助教授 (20152358)
中島 祥夫 千葉大学, 医学部, 教授 (60092079)
本間 三郎 千葉大学, 医学部, 名誉教授 (70009075)
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研究期間 (年度) |
1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
1991年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
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キーワード | てんかん焦点 / 双極子追跡法 / 硬膜下電極 / 実形状3層頭蓋モデル / 3-layered head model / CT scan data |
研究概要 |
双極子追跡法では被験者の頭蓋の実形状を計測し、頭蓋内部は一様な導体と仮定している.しかし頭蓋内部の導電率は一様ではなく、ことに頭蓋骨の導電率は他に比べると約100分の1程度であるから、どうしても補正をしなければならない。この補正をどのようにするかが、双極子追跡法の最大の問題点である。頭蓋内部の電気的な不均一性を計算に取り入れることができれば、双極子追跡法は非常に信頼性があり、かつまた取り扱いが簡便・安価で実用性が高い新しい測定法になる。そこでこれを解決するためにスエ-デンのウプサラ大学病院のHagbarth教授およびBlom教授と共同研究を行なってきた。てんかんは焦点と呼ばれる部位からの電気的な異常信号によって脳の他の部分の異常発振が誘起されて発作が起こる。てんかん治療するためには焦点を外科的に切除する必要がある。そこで焦点の位置を確認するために頭蓋骨に穴を開けて硬膜と大脳皮質との間に電極を挿入して異常電位の発生場所を調べるのであるが、その際に同病院の倫理委員会および患者の許可を得て電極間に微弱なパルス状の電流を流して人工的な双極子を作った。それによって発生した頭皮上電位から、実形状一様導体で近似した頭蓋モデルを用いて双極子の位置を求めた。人工的な双極子の位置と実形状一様導体頭蓋モデルによる双極子の推定位置とを比較することによって、補正のデ-タを得ようとするものである。 頭蓋骨の導電率は他の組織の導電率に比べてかなり小さいので、頭蓋内部を一様導体とすると推定位置にズレが生ずる。このズレの位置を求めたためにできるだけ多様の患者についてのデ-タを得る必要があり。平成3年9月22日〜10〜6日まで中島および岡本が、また同10月2〜10月17日まで本間がウプサラ病院に赴いてHagbarth教授およびBlom教授と共同で3人の患者についての測定を行なった。これらの結果によると、実形状一様頭蓋モデルによる双極子位置の推定結果はいずれも真の位置から約33〜35%だけ内部に位置がすれることが明らかになった。したがって、実形状一様頭蓋モデルで推定した双極子の位置を50%だけ外部にずらせば、ほぼ正確な電源の位置が得られることになる。しかし、そのためには頭蓋の中心を求めなければならないが、球形からかなりずれている頭蓋の場合には中心を適切に求めるのが困難である。さらに頭蓋下部の骨の厚さは非常に複雑な形をしているので補正ができない。これらの困難を解決するには、さらに現実に近い頭蓋モデルを採用しなければならない。本年度の研究の後半では「実形状3層頭蓋モデル」の骨組みが出来上がった。頭蓋を頭皮・頭蓋骨・脳組織の3層に分け頭蓋骨の形を正確にモデルに取り入れ、それぞれの層の導電率を適当にするとそのままで正確な電源の位置が推定されるはずである。 実形状3層頭蓋モデルの妥当性を確認するために武者は平成4年1月26〜2月2日にかけてウプサラの大学病院を訪れて、硬膜下電極への通電実験と同時にX線CTによる頭蓋骨形状の精密測定を行なった。現在結果は解析中である。この一連の実験によってわれわれがこれまでに開発をしてきた双極子追跡法は完成し、我が国独自の新技術として完成するであろう。
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